ライカM8が登場したのは2006年。それまでレンジファインダー式のデジタルカメラはEPSON R-D1のみであった。本家ライカがなんと「M8」という名を冠して遂にM型のデジタルをリリースするという。一体どんなカメラになるのか誰もがドキドキしたのではないだろうか。R-D1はアナログ指針式のメーターを軍艦に載せ、シャッターチャージは巻き上げレバーで行うといった非常に遊び心のあるカメラだが、本家が送り出してきた初のM型デジタル「M8」はストレート・ど真ん中だった。何の刻印もなく、巻き上げレバーの無い軍艦は、見慣れたM型ライカに比べるとひどくのっぺりとしていた。M型のパッケージングでデジタルを実現するためにボディは若干厚くなっていたから余計に。M8の初期ユーザの大半は所有者として、または興味の対象として何かしらR-D1と関わってきただろう。当然、R-D1的な文法をM8にも求める。ただでさえ、「M3の巻き上げの滑らかさが・・・」「ささやくようなシャッター音が・・・」と操作フィールだけで小1時間語れるような人々だろうから。ライカからすれば、縦走りのフォーカルプレーンシャッターを搭載する時点で、巻き上げレバーなど眼中になかったろうし、軍艦の刻印など、M6以降基本的に「無し」な訳で、何を今更という話だったのかもしれない。しかしそれが余計に、本家とフォロワーとのコントラストを浮き彫りにしたのだった。

M8の画は新鮮だった。それまで4×5や8×10のポジフィルムで撮るのが当たり前のプロが見向きもしなかったデジタルなのに、M8を手にした途端、のめり込むのを度々見かけた。ちょうどハイエンドの中判デジタルバックが浸透し始めた頃と重なる。ローパスレスの画をちらほら見ていたときにM8と遭遇した、といったところだろう。のちに大騒ぎになった、IRカットの効きが弱いことによる独特の色再現も面白かったのだと思う。写真界のメジャーな賞をナメてるのは、ある時から大半ネガフィルムで創り上げられた作品達である。M8の画はカラーネガのような色調なのだ。このあたりもプロが夢中になった理由の一つかも知れない。

IRカットの効きの弱さは、黒い服を紫色に染めてしまう。米国を中心として大クレームの嵐に発展し、急きょUV/IRカットフィルターを購入者に2枚ずつプレゼントするなんて話にもなった。しかし赤外被りを逆手に取って、デジタルでモノクロームを楽しんだり、赤外線写真を楽しんだりというユーザも多々見かけた。今となってはある種M9あたりよりよほどドイツらしいカメラだと感じる。技術的にこなれてなかったのもあるだろうが、ライカからすれば、恐らくそこまで大騒ぎするようなことではないと考えていたのではないだろうか。実際、M8/M8.2で四六時中UV/IRカットフィルターを使う人をあまり見かけない。確かに一定の条件下で赤外被りは起こるのだが、仕事ならともかく普段使いに致命的な影響は無いだろうからか。ちなみに、赤外被りはUV/IRカットフィルターを用いることで回避できる。考えようによっては、フィルターの付け外しで2通りの描写が楽しめることになる。少なくとも赤外線写真などはM9よりも断然M8/M8.2のほうが適している。そう考えれば、M8/M8.2はむしろ貴重な存在か。

M8の登場から約2年後、マイナーチェンジ版のM8.2がリリースされる。M8もそう五月蠅いシャッター音では決して無く、むしろ静かな部類だが、さらなる静音を望むユーザに、最高速を1/4000に落として静かなシャッターを搭載してきた。シャッターボタンを放すまでチャージを行わないモードを搭載しユーザの好みで選べるように。こんなカメラ、ライカぐらいだ。ブライトフレームの視野率が最も高くなるポイントを変更し、液晶モニターのガラスをサファイアに。同時にブラッククローム仕上げを廃し、ブラックペイントモデルを追加した。要するにM8.2は、M8をリリースした後のユーザの声を反映したモデルであり、本質的にはM8とあまり変わりはない。まさに車の世界のフェイスリフトみたいなものだ。M8/M8.2は現時点(2011.1.05)で既に流通在庫のみといった状況である。M9がかなりまとまったモデルとなったいま、独特の色調や個性を持つ画を叩き出すM8/M8.2はかなり貴重だ。手に入れるならお早めに。

M9でRAWで撮影し、ホワイトバランスをはじめとするあらゆるパラメータを操作しても、M8/M8.2の画にはならない。何度も用いて表現が妥当かその都度不安になるのだが、まさにネガフィルムとポジフィルムの違いみたいなものなのだ。上の写真のようなどことなく澱のあるヌケ切らない表現は、M9では曇ったオールドレンズに頼らないと難しい。M8/M8.2は少しグリーン/イエローに転びつつ、ポジフィルムのようにスカっと抜けない。(右上へ)

これがIRカットの効きの弱さによってもたらされるのかはわからないのだが、画が作り込まれず、あるがままの光が写り込む印象だ。センサーの前にできる限り余計なものが無いほうが望ましいのだろうし、センサーに色々な物が積み重なれば、当然本来ある光も減衰しそうだ。素人の想像に過ぎない話なのだが、いずれにせよM9では再現できない、独特の描写がM8/M8.2にあるのは間違いのない話である。(左下へ)

M8/M8.2は、ハイキー描写が面白い。

M9で同じように撮影すると、妙なコントラストの付き方をして上手く行かないのだが、M8/M8.2の場合、ミドからハイライト、ハイエストライトと綺麗に色が抜けていく。M8/M8.2のセンサーはM9のセンサーを丁度トリミングしたようなもので、1画素あたりのピッチは確か変わらないはずだ。したがってセンサーサイズに起因するものだとは考えづらい。しかし、M9とM8/M8.2の描写傾向は明らかに違う。・・・まあそんなことはどうでもよい。

M8/M8.2を手にすれば、いま写真雑誌などでよく見かける、浅い色で少し彩度の低い、少し色の転んだ写真が、いい感じに撮れるはず。

デジタル時代になって、色調やコントラストを自分でコントロールするのが当たり前に。それなのに、M8/M8.2はまるでフイルムのよう。そのフイルムを用いなければ手に入らない描写。なんとも面白いデジタルカメラである。

このサイトで作例撮影を担当したカメラマンの1人は、未だに初期ロットのM8ユーザである。何ら不満が無いのが大きな理由だが、その他のカメラマンもM8を所有し続けている。M9は決して安いカメラではない。売り払って軍資金にすることもできた。しかし、M8/M8.2には手放せない大きな魅力があるのである。また、最新の現行レンズに興味がないのであれば、M8/M8.2あたりがちょうどバランス的に良いとも言える。ただでさえ極端に短いフランジバックだ。オールドレンズを用いて、フルサイズでは周辺が厳しすぎる。気にしないユーザも多いようだが。。。

これまでフイルムのMで撮ってきて、これからデジタル・レンジファインダーに食指を伸ばそうという方にも、まずはM8/M8.2をおすすめしたい。さすがに発売当初より割安となり、M9に比べれば随分リーズナブルだ。正直デジタルカメラは発展途上とはいえ、まだまだ高すぎる。M9のページで「安い」と書いているわけだから矛盾そのものではないかと指摘されるだろう。あれは他と比べれば、という話である。安くなったM8/M8.2で撮影のための旅行費用やレンズにお金を回せるなら、それも吉。そしてデジタルレンジファインダーの世界を満喫して欲しい。

M8/M8.2のクセについて色々と記したが、愛すべきクセを書き連ねたに過ぎず、極端な言い方をすれば赤外線が強く影響しているようなシーン以外では普通の描写をするので、そのあたりは誤解無きよう。

我々人間の眼では赤外線を捉えていないが、センサーはそもそも赤外線に対して感度がある。見えないものが写り込んでは困るためにフイルムでもセンサーでも赤外線はカットされているが、我々人間は見えなくても見えてるのかもしれない。

MDが登場したときに、人の耳では感知しづらい周波数の情報をカットしてデータを圧縮し、小さなディスクに音を収めるとの説明を聞いた。しかし実際利いてみればCDとの音の違いを感じる。ひょっとして同じようなことがM8/M8.2にはあるのかもしれない。なんてたって、よいものはよいのだ。試しに、M8/M8.2を使った上でM9に移行したユーザが近くに居れば聞いてみてほしい。恐らく「M9もいいけど、M8/M8.2もいいよ」。こんな台詞が返ってくると思うのだ。



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