彼女との出会いは写真展でした。レンジファインダーカメラ好きが集まって開いたグループ展。凛とした姿で会場に現れた女性が、透きとおった目で一点一点写真を眺めている。放課後の部室のように日々くだらない話に花を咲かせていた私たちは、にわかに言葉を失うと、ただ彼女の目線の先を追ってしまったものです。

彼女の名は高野志穂(たかの しほ)。職業は役者。NHKの連続テレビ小説「さくら」に主演していたと言えば、ご存知の方も多いのではないでしょうか。そんな彼女の肩にかかっていたのは、使い込んだブラックペイントのライカ。きちんと写真を撮っている、そういう姿をしたカメラでした。

そもそもライカというカメラは、写真好きでなければなかなか手にしないものです。若い人が手にしていること自体めずらしく、それが女性であれば尚更。「どうしてライカを使っているのだろう」「どんな写真を撮るのだろう」「どんな人なのだろう」。きっかけこそ1台のカメラですが、私たちの興味はそれを使う人そのものや、その生き方に向かいます。それを持っていること、使っていることの背景には、必ずそれぞれのストーリーがあるはずです。

”レンジファインダーな人達”、今回は高野志穂さんを追ってみたいと思います。舞台という世界。役者という生きかた。ファインダーを通して彼女が見ているものは、はたして何なのでしょうか。

(聞き手:M.Ishizuka / 撮影:A.Inden)

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