四季折々に見る自然の輝きはそれぞれの趣があってとても美しい。シアトルの秋は雨期に入るのでからっと晴れる日が少ない。さーっと降っていた雨で浮遊していた塵が大地に沈められたのか、たまの快晴日にはハッと思わせるクリスタルな光線が空間を透過し、目の曇りが拭われたかのように見えるすっきりとした風景が出現する。そうなると光の中に体を埋めて過ごすのがその日の最優先事項になり、仕事だろうが約束があろうがほっぽらかして自然に親しむことになる。

季節によって色や形が変化する木々の葉を見るだけでも景色の違いが楽しめる。秋になると緑が薄くなり始め、気温が下がってくると一気に黄色や赤色に変色していき、そしてついには縮んだり切れたりしている枯れ葉があちこちに舞うフィナーレの豪華な見せ場があって、ようやく本格的な冬に入る。その頃には目立たなかった常緑樹は緑を誇らしげに揺らし、舞台を引き継ぐ用意がととのうのだ。


ワシントン州には湖が大小7000、河川が4000あるという。確かにシアトルの市街地からどちらの方向へ進んでも、それほど遠くないところで必ず水に突き当たるので、この数字もなんとなく納得できる。ここは人と住と水が一体となって生活が成り立っている土地なんだと実感する。今の時期は天気がよければ湖も空も様々な輝度で青が映え、岸辺の木々の紅葉の変化が景色の中から抜き出てくる。


これだけ水の多い環境に住むとやはり余暇を楽しむ方法として船はかかせない。ボートを軽快なトレーラーで運搬しているのをどこの街でもよく見かける。余地があれば住宅の回りに置いたり、無ければ保管してくれる駐艇場もあちこちにあるから不便はない。小さなフィッシングボートを持つことは、自分が将来時間が出来た時に実行したいウイッシュリストの上位に鎮座している。

市街地近隣の湖や川沿いには必ずといっていいほど人が通れる林道が設けてあって、散歩やジョギングをしている人と出会うことがあるし、鹿、うさぎ、リスなどの野生動物や時にコヨーテも見かけたりする。

ワシントン大学の敷地内には一般の人も使えるヨットの寄せ場がある。とても静かで環境がいいので、暖かくて風のない日はこの周辺に座って買ってきたランチを食べながら時間を過ごすのが好きだ。

久しぶりに降り注ぐ太陽の光にわ~っと歓んできらきらと照り輝く家々。湖上を飛んでいる雁もびっくりしているだろう。間もなく空は厚い雲に閉ざされ、冷たい雨が降り続ける日々がくるのだから今のうちに君たちも一緒に声を高らかに上げようよ。

一人座って本を読むのも良し、ぼんやり思いを巡らすのも良し、お腹が空いたら秋の彩色を愛でながら弁当を広げるのもいいだろう。たっぷり時間をとってこの季節のひとときを楽しもうではないか。

暗くなり始めた頃、この水草は夜光性かと思わせるような不思議な光で葉を輝かせていた。間もなく世代交代となるラストのエネルギーを振り絞って自分を奮い立たせ、枯れて茶に変色していくのを少しでもきれいに見せようとしているのだ。こんなに美しい姿を撮らずにいられようか。

Scott Tsumura

アメリカ合衆国ワシントン州ベルビュー市在住。69歳。
Tozai Inc. エグゼクティブプロデューサー。

>> Scottさんblog " shot & shot "
>> Tozai Inc. オフィシャルサイト

このページの上部へ