“写真集を創る” レポート TOP

「世界を形にする」行程
構成要素を一気に組み立て、磨き、形に変えていく作業

前の行程まででおおよその設計は終わり、ここからは印刷・製本行程に向けて一気に作業を進めていきます。同時に著者と頻繁にコミュニケーションをとりつつ細部の詰めを行い、一冊の本として洗練させていく作業となります。デザイナーはデザイン作業を行う傍ら、印刷所との連携も進めていきます。

⑪装丁仕様決定

セレクトしたカットが違和感なく本の中で流れることを念頭に、濃淡・緩急をつけるために余白を設けたり、ページの割り方をイメージします。ただしここではあくまで最終工程ではなく、編集およびデザインのトライを行いながら、まず装丁仕様の決定を目的としています。つまり、本としての「最終的な形」を決めることで、ページ数や採用する紙、表紙で採用する紙の決定を行います。ここでいわゆる「束見本」が作成されます。束(実際の厚み)を計測することで、背表紙(本を棚に入れたときに見えるタイトルが入る面)のデザインを行うことができるのです。

ページ数と紙の斤量によりますが、厳密に計測しなければ、
デザインデータ上で0.5mm違ってもタイトルは背表紙の中心には来ません。
細かい話であれば、湿度の高い日に空調の整っていない環境で計測してしまえば、当然数値は変わってしまいます。

⑫本編集と⑬本デザイン

「段取り八分の仕事二分」という言葉がありますが、本編集と本デザインとはその最後の二分の仕事になります。たとえば、紙に背景色をのせて、その上にテキストが並ぶとします。背景色の濃度が数パーセント変わるだけでも印象は大きく変わります。また、デザイン作業中にモニタで見て差異を感じられても、実際に印刷してみればさほど変わらないこともあり得ます。このあたりは経験則に照らし合わせて煮詰めていきます。この「最後の二分」の仕事は、ひたすら物事を詰めていき、1冊の本として全体のバランスを整えていく作業と言えるでしょう。

⑭レビュー&ブレストと⑮各種修正・入稿

最終的な編集とデザイン作業が終われば、印刷所へデータを渡すために著者と最終確認を行います。やはり人が行う作業であり、それも複数の人が関われば、どれだけ気を配っていても抜け・漏れ・揺れなどは発生してしまうものです。丁寧にそれらを潰していきます。また、最早印刷を行うだけの段階であり、写真集ができあがる実感はかなりのものになっています。心も躍り、当然欲も出てきます。「本当にこれでよいのか」と悩むことも別に不思議なことではありません。やりとりを重ねながら入稿に備えますが、データ入稿時はそれでもやり残したことがないか気が気でないものです。心境的には「人事を尽くして天命を待つ」。あとは印刷所の匠の技術に委ねましょう。

( 2017.11.22 )




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