“写真集を創る” レポート TOP

「物に仕上げる」行程 ① 〜オフセット印刷のしくみ〜
著者のもつ世界と写真が物になる最終行程

さて、いよいよ構成してきた世界を紙に載せて「一冊の本」に仕上げていく行程です。今回は4色オフセット高精細印刷を行いました。今回、名だたる写真家やアートディレクター、デザイナーの皆さんが絶大なる信頼を寄せる、株式会社山田写真製版所に印刷をお願いしました。行程の解説の前に「オフセット印刷のしくみ」をご案内しましょう。

印刷そのもののしくみ

カラー印刷はC=シアン、M=マゼンタ、Y=イエロー、K=ブラックの4つの色に分解された「版(ハンコのようなもの)」で、1色ずつ重ね合わせて実現します。重ねる順序はブラック、シアン、マゼンタ、イエローです。このそれぞれの色の版は「網点(あみてん)」で表現され、各色の網点の重なり具合で、色やその濃度が表現されます。


印刷の肝「製版」

カメラの画像データは「光の三原色であるRGB」です。それを印刷で表現するには「色の三原色であるCMYと、暗さを調節するK」に変換する必要があります。これを「色分解」といいます。そして、各色の版(ハンコ)を作ります。色分解を受け持つオペレーターのキャリアとノウハウで、画像の美しさが決まってきます。


オフセット印刷機はともかく、大きく、長い。

オフセット印刷機は、一色ずつインクを載せる印刷機器が縦列に並んだとても大きな機械です。それぞれに各色のインクと版がセットされ、縦列に並んでいる中を用紙が走り抜ける、そんなイメージです。

オフセットしているから「オフセット印刷」

どのように”インクが載り”、どのようにそれが”用紙に転写されるのか”を見ると、「オフセット印刷」と呼ばれるゆえんがよくわかります。

つまり、版が直接用紙に触れない(オフセットしている)ため、「オフセット印刷」と呼ばれます。

写真を印刷する難しさ、そして、写真を知り、写真に力を与える印刷所

インクジェットプリンターなどで、写真を、画面通りに、または思い通りに印刷できない。そんな経験がありませんか? この理由は大きく2つあります。1つは写真の色とプリンタの色で、意思疎通が図れていないこと。つまりは総体としての「カラーマネジメント」が取れていないため。もう1つは、カメラ(またはフィルム)と印刷による再現幅の違いです。家庭用のプリンタで皆さんが苦労されるのと同様、商業印刷においても一定の工程を経ないと、望む色再現に追い込むのは難しい作業です。今回依頼した株式会社山田写真製版所は、その名の通り、元々は写真製版を主業務としていました。後に印刷自体も行われるようになりましたが、写真印刷に対するノウハウ蓄積が桁違いのものを感じます。そして同社の写真印刷は、単にデータの再現性の高さのみならず、印刷という工程を経ることで、確実に写真を1つ上の領域に持って行ってくれます。次のページからは、同社特有の哲学とノウハウについて、印刷行程の解説とともにご案内いたします。

( 2017.11.22 )




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