“写真集を創る” その作業の全貌と面白さについてレポート

ただの紙が、想いをのせた「物」になる。

上の写真は「束見本(つかみほん)」。紙の質感や、表紙とページで用いる紙の違いによるマッチングの確認、背表紙の実寸計測などを行うために、実際の写真集の仕様で製本作成するサンプルです。ここに”写真集”というひとつの世界が載るわけですが、束見本の状態では余程の斤量(紙の厚み)がない限り、単なるノートにしか見えません。写真集は、想いの整理から編集・デザイン・印刷・製本・配本と、数多くの行程を重ね、たくさんの人の手が入ります。そうしてできあがった写真集を束見本と共に手にすると、本当に「想いが物になる」なんて、思わず口をついて出てくるのです。写真プリントにもそんな実感はありますが、写真集となれば1つの世界が本に宿るのです。この面白さをぜひ読者の皆さんに伝えたい。著者であるScott氏と、印刷および製本でタッグを組ませていただいた株式会社山田写真製版のご協力を得て、レポートしたいと思います。


撮りためた写真を一冊にまとめたい。
自分そのものよりも、この一冊に自分を見て欲しい。

写真集を作ろうと考えたきっかけは、The wind from Seattleの最終回に記したとおり。当初連載のお話を頂いた際に、自分がそれをつとめられるか全くわかりませんでした。なんとか50回を数えるところまで来て、初期のパッションに任せた楽しさもあり、いつの間にかテーマに縛られて撮影することが重荷になったり。5年にわたる連載の中で、振り返ればいろいろとありました。プロフェッショナルな写真家でもなければ、エッセイストでもない自分ですが、ともかくよい経験になりました。折しも連載終了時に結婚50周年を迎え、連載も50回。これまで仕事を含めた環境が変化すること数知れず、よくぞこの興味の虜とも言うべき自分に妻も付き添ってきてくれたものだと感謝しています。ちょうど50と50。これまでの連載を総括して写真集を作り、妻にプレゼントできればと考えたのがきっかけ。そして自分にとっては考えるよりも先に、シャッターを切るのが写真。考えてみれば、自分というものが最も現れるのが写真なのかもしれない。写真集が出来上がり、この一冊を通じて手にされた方に私を感じてもらえれば、こんなに嬉しいことはありません。・・・そんなところなのですが、いざどう作ればよいのか皆目検討がつきません。そこでPY編集部に相談に乗っていただいたわけです。(Scott氏)


「創る」プロセス。

写真集を作り上げるには、ざっと上のような行程で作業を行う必要があります。今回のプロジェクト特有の行程もありますが、それはまた後に解説いたします。いまやWEBサービスなどで、定型フォーマットに写真を配置し気軽に写真集を作るサービスなどが多数存在します。今回はそれとは対極の、複数の人々が関わる制作プロセスとしました。フォトヨドバシ編集部で編集とデザインを行い、印刷会社への橋渡しもつとめます。さて、次のページから「編集の実態作業」をお伝えします。まずは①〜⑤の行程、題して「想いを整理する」行程です。

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( 2017.11.22 )




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