“写真集を創る” レポート TOP

「想いを整理する」行程
想い描く姿を、おおよその形にしてみる作業行程

写真集をどんな形で作るにしても、時間や予算の制約は生じます。最初に写真集を作る目的を伺いました。そして、内容・量・本という物としての質(紙質や装丁)と伺い、おおよその費用などを目的とつき合わせながらお話しします。そこから形を問わず、ともかくご自身で一旦写真のセレクトや、仕上がりを想像しながら簡単にレイアウトを行っていただきました。それぞれの行程をもう少し詳しく解説すると以下のとおりとなります。

①目的の整理

まず写真集を作りたいという「想い」そのものを会話の中で掘り下げていきます。Scott氏のお話を伺っていると「連載の集大成として」「奥様をはじめとするお世話になった人へ贈りたい」「自分を代弁してくれるようなものに仕上がれば嬉しい」といった想いが明確になりました。日頃からプリントに慣れ親しんでいるわけではなく、本格的な商業印刷の経験もないとのこと。想いも踏まえて、パーソナルには実現が難しいクオリティの印刷で本を残されたらどうかと考え、提案しました。いわゆる一般書店での流通を目的としたような写真集ではありません。連載記事の読者のみなさまにお届けしたいということもあり、フォトヨドバシ・ヨドバシ.com・ヨドバシカメラ全国各店の店頭に配本することとしました。

②予算とのつき合わせ

オンデマンドでの写真集印刷サービスなど、最近は印刷もかなり身近になってきました。もちろん、家庭用プリンターで自家製本といったこともできます。しかし目的と想いを踏まえると、しっかりと納得がいくまで編集作業を行い、写真を得意とする印刷会社に依頼して印刷・製本することとしました。フラッグシップの一眼レフが買えるほど、印刷および製本に費用はかかります。しかし、必ずその仕上がりに満足いただけると確信があっての提案でした。

③想いの整理

目的の整理と予算とのつき合わせを行い、今一度原点である「想い」の整理を行って頂きます。一口に写真集を作るといっても、実現性の可否を問わず様々な取り組み方があります。それをすべて同じテーブルに載せた上で、提案の内容と「想い」をつき合わせる必要があるからです。

④仮セレクト

まずご自分でざっと載せたいカットをセレクトしていただきました。それを一緒に眺めながら、「編集側の立場」として一旦遠慮なく取捨選択します。我々編集部員も撮り手の1人。撮った本人は思い入れがあって、なかなか1枚のカットを客観視できないことは常々痛切に感じていることです。だからこそ第三者の編集スタッフを立てる意義があります。Scott氏も「あれもこれも捨てられちゃって・・・」と笑いながら後日話をされていましたが、できる限り遠慮なく行いました。その上で「どうしても・・」というカットは「想い」そのものです。それは意義のあることだと言えるでしょう。こうして、できる限り1枚1枚の意義を明確化させていきます。


⑤仮レイアウト

仮セレクトが終われば、次はご自分の手で「仮レイアウト」をどんな形でもよいので取り組んでいただきました。世の中には数多の写真集が流通しています。それらをモチーフにしたり、どんな形でもよいのです。また仮セレクトは、あくまで「仮」のため、この段階で新たにセレクトしたカットを差し込んでも構いません。写真が1枚だけある状態と、横に並ぶこと、章立てになったときに、1枚のカットの立ち居振る舞いは変わってきます。ご自分の手で仮レイアウトを行っていただく理由は、まさにこのことに理解を深めていただくためです。それに、なにより楽しい作業でしょう。「想い」を形にする、その輪郭を描く作業ですから。仮レイアウトの作業が難しい場合、極端な話、たとえば写真集の「前書き」「後書き」を思い浮かべるだけでも構わないのです。これから作り上げるものの世界を想い描くことが大事だといえます。

数多のプレゼンテーションを行ってきたプレーヤーであるScott氏。
プレゼンテーションソフトで、スピーディに仮レイアウトを行っていただけました。
初期のタイトルは「THE STRANGER」だったのです。この話はまた後ほど。

( 2017.11.22 )




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