Leica M Typ240, Voigtländer Ultron 35mm F1.7 Aspherical VM, 1/250, F2.8, ISO 400, Photo by Naz

Voigtländer Ultron 35mm F1.7 Aspherical VM

1999年にLマウントから始まった現在のフォクトレンダーブランドのレンズ。その後Mマウント化に合わせてリニューアルが進み、近年はそのラインナップもほぼ出揃った感がありました。そこへ新たに投入されたのが"Vintage Line"というライン。第一弾はNokton 50mm F1.5 Aspherical VMでした。レンズの設計はLマウント時代にラインナップされていた同名のレンズをベースに、1950年代の稀少なNokton 50mm F1.5の意匠を施されたレンズとして登場しました。そして、Vintage Lineの第二弾として登場したのが、今回のUltron 35mm F1.7 Aspherical VMとなります。こちらも50mm F1.5と同様、過去に発売されていたLマウント版に同スペックのレンズがありましたが、こちらはデジタル対応の新設計。構成図を見比べてみると凹レンズの前玉や非球面の後玉など、特徴や設計思想は似ていますが、1枚多い7群9枚のレンズ構成となっています。35mmの単焦点レンズとしては贅沢な設計ですよね。鏡胴はVintage Line同様のデザインで、50mmに比べると鏡胴の前側はかなりスリムな印象に。くびれの前後に絞りリングとヘリコイドリングが配置される機能性の高いデザインです。特に真鍮製となるシルバー鏡胴では、工芸品と言えるような高い質感と凝った工作により、所有欲も大きく満たしてくれるのではないでしょうか。では、早速気になる写りを見ていきましょう。

( 写真 / 文 : Naz )

Leica M Typ240, Voigtländer Ultron 35mm F1.7 Aspherical VM, 1/60, F2.5, ISO 800, Photo by Naz

開放F1.7のハイスピードレンズ、まずは夜に持ち出してみました。無限遠にセットして撮影したこちらのカット、カメラ内蔵のモニターで確認して驚きました。小さなモニターでもわかるほどに、開放から猛烈にシャープ。ローパスフィルターを持たない​ライカMの​センサーが持つ​力を​存分​に発揮させてくれるレンズです。

Leica M Typ240, Voigtländer Ultron 35mm F1.7 Aspherical VM, 1/500, F1.7, ISO 800, Photo by Naz

こちらも開放。人物より手前の目地にピントを置きましたが、ピントピークからの前後のボケには誇張がなく、なだらかに像が崩れていきます。

Leica M Typ240, Voigtländer Ultron 35mm F1.7 Aspherical VM, 1/400, F1.7, ISO 200, Photo by Naz

NDフィルターを用意するほどではありませんが、晴れた日中ですと、F1.7での撮影は最高速付近のシャッター速度でやっとといったところ。ベースのISO感度が高いカメラですと、少し絞ってあげる必要がありますね。クリアで美しいボケ味ですが、​子細に見ていくと​条件によっては二線っぽ​くなる場合があるようです。​といっても​気にする必要のないレベル。立体感もなかなか。開放付近で目立つ周辺減光も1段絞ると落ち着いてきます。

Leica M Typ240, Voigtländer Ultron 35mm F1.7 Aspherical VM, 1/1000, F8, ISO 200, Photo by Naz

開放から絞り値を問わず画面全体が安定した描写ですから、絞りは被写界深度のコントロールのためにあるといった感じです。こちらはF8まで絞って深度を稼いでいますが、打ち寄せた波が飛沫となった瞬間を緻密に描いています。原寸の画像(約19MB)もどうぞご覧ください。

Leica M Typ240, Voigtländer Ultron 35mm F1.7 Aspherical VM, 1/4000, F11, ISO 200, Photo by Naz

レンズに施されたコーティングが素晴らしく、逆光にもたいへん強い印象です。今回のロケにあたり様々なシーンを撮影してみましたが、ゴーストやフレアのあるカットは見当たりませんでした。

 

Leica M Typ240, Voigtländer Ultron 35mm F1.7 Aspherical VM, 1/500, F1.7, ISO 200, Photo by Naz

UltronはMマウントレンズながらも距離計連動外の最短0.5mまでクローズアップすることが可能です。一眼レフをお使いの方は驚かれるかもしれませんが、現行のライカレンズは0.7m、往年のレンズでは1mが最短撮影距離でしたから、わずか0.2mでも大きな進化。CMOS世代のライカMやミラーレスカメラなど、ライブビュー撮影が行えるカメラでしたらその恩恵に与ることができます。こういったテーブルフォトは、最短撮影距離の長いライカの苦手とするところでしたが、35mmレンズの画角ならば皿ひとつにクローズアップできないまでも、テーブル全体の雰囲気と一緒に写し撮ることは可能です。木、布、紙、金属、ガラス、トースト、バター、キャロットラペ、サラダ、乾いたもの、濡れたもの等々。テーブルの上に広がる小さな世界を質感豊かにしっかりと描き分けています。

Leica M Typ240, Voigtländer Ultron 35mm F1.7 Aspherical VM, 1/350, F2, ISO 200, Photo by Naz

遠近感に誇張のない画角のレンズですから、肩の力を抜いたかのように目の前の光景を自然に捉えてくれます。

Leica M Typ240, Voigtländer Ultron 35mm F1.7 Aspherical VM, 1/125, F2.5, ISO 200, Photo by Naz

Leica M Typ240, Voigtländer Ultron 35mm F1.7 Aspherical VM, 1/500, F2.5, ISO 200, Photo by Naz

Leica M Typ240, Voigtländer Ultron 35mm F1.7 Aspherical VM, 1/500, F2.8, ISO 200, Photo by Naz

こちらも距離計連動外となる0.5m付近。ライブビューなら、ピントや西瓜の配置、さらに水面の反射まで確認しながら撮影ができます。レンジファインダーカメラらしくない撮り方かもしれませんが、これまではできなかったわけですから、様々な撮影スタイルを試せるというのはありがたいものです。

 

Leica M Typ240, Voigtländer Ultron 35mm F1.7 Aspherical VM, 1/2000, F2.8, ISO 400, Photo by Naz

Mマウント35mmレンズの新しいスタンダード。

35mmはレンジファインダーカメラの世界では「標準レンズ」と言われる焦点距離だけに、ライカもカールツァイスも複数のレンズをラインナップしています。フォクトレンダーブランドでもF1.2・F1.4のNokton、F2.5のCOLOR-SKOPARと充実したラインナップを誇りましたが、さらに間を埋めるポジションにこのUltronを登場させてきました。1.4に迫る明るさでF2クラスの取り回しのよさを誇り、どんな場面でも信頼のおける破綻のない現代的かつクリアな描写。ピントピークの素晴らしいキレと大口径レンズらしい大きく上品なボケ味を併せ持った製品に仕上がり、35mmレンズのラインナップも大きく厚みを増した印象です。

フォクトレンダーのM/Lレンズは、高い光学性能のF1.1・F1.2の大口径レンズや写りのよい小口径のパンケーキレンズ、コーティングや収差を意図的に残してクラシックな写りを狙ったレンズ等、マニアをニヤリとさせる製品が目立っていましたが、新しいVintage Lineでは、質感の高いクラシカルなデザインを身に纏い、コシナが持つ技術力を存分に活かしてデジタル時代に対応する最高レベルの光学性能を追い求めてきた印象です。やや値は張りますが、初めての35mmレンズとしても、様々なレンズを渡り歩いた方の決定版としてもご満足いただける、新しいスタンダードとなり得る実力を感じます。

アルミ製の鏡胴にアルマイト処理が施されたブラックは、238gと携帯が苦にならない軽量な仕上がり。手にした時のズシリとした感触や、独特な肌に伝わる温度など、金属鏡胴としての質感を重視した真鍮製のシルバーは、330gと重量感のある仕上がりです。付属のフードの他、高い質感を誇るスタイリッシュな金属製スリット式フードも用意され、コシナのこだわりが随所に感じられる珠玉の1本です。

( 2015.08.28 )

Voigtländer Ultron 35mm F1.7 Aspherical VM

PHOTO YODOBASHI
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専用フードはレンズ同様、手の込んだ造りのスリットタイプ。フィルター枠へ取り付ける2ピース分割式ですが、フード側に46mmのフィルターネジが切ってあるため、フィルターの有無でレンズの全長が伸びません。

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こちらはシルバー鏡胴に合わせ、外側がシルバーになっている美しいフード。このレンズの美しいスタイルはこのフードをつけることで完成します。ウットリしましょう。

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cokin CE235B46A 46mm UV
マルミ光機 DHG スーパーレンズプロテクト46mm 黒枠

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真鍮製の枠のフィルターです。真鍮の鏡胴には同質のフィルターを使うと安心です。

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デジタルに最適化された保護フィルターです。

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レンズ沼の深淵を覗く
カール ツァイス Biogon T* 2.0/35 ZM B ブラック [ビオゴン 35mm/F2.0 ZM]
カール ツァイス C Biogon T* 2.8/35 ZM ブラック [C ビオゴン 35mm/F2.8 ZM]

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恐らく最大のライバルでしょう。どちらもコシナ製ですが、レンズ構成の違いによりまったく違う味わいをお楽しみいただけます。

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コンパクトなツァイスの35mm。描写は現代レンズの安定した性能にオールドレンズの楽しさ組み合わせた、まさに美味しいとこ取り。なかなか1本には絞れないものです。

フォクトレンダー NOKTON classic 35mm F1.4 マルチコーティング(MC) [ノクトン 35mm/F1.4 VM]
Carl Zeiss Distagon T* 1.4/35 ZM

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こちらもオールドほどの危うさはないものの、結構なクセ玉。しかし、それを楽しめば、使い勝手のいいコンパクトで明るいレンズとなります。

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ツァイスからリリースされた最新のハイスピードレンズ。究極はひとつではないのです。

ライカ 11879C SUMMICRON-M 2/35mm ASPH. [ズミクロンM 35mm/F2 ライカM]
ライカ 11663 SUMMILUX-M 1.4/35mm ASPH. ブラック [ブラックM 35mm/F1.4 ライカM]

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フィルム時代の設計ながらも、デジタル時代にもしっかりと力を発揮する、ライカレンズのスタンダード。

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目が飛び出るようなプライスですが、頂は常に高いもの。使わずしてこのレンズの凄さは語ることができません。究極の35mmレンズ。

クラシカルなスタイルに現代的な光学性能をミックスさせたフォクトレンダー・最新の35mmレンズ、いよいよ登場です。アルミ製の鏡胴で軽快に使える現代的なブラックと、オールドレンズのように真鍮ならではのずっしりとした重みを感じていただけるシルバーをご用意。あなたの目的に合わせてお選びください。
ブラック
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シルバー
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