Leica Camera AG、Head of Professional Imagingである、Stefan Schulz(ステファン・シュルツ)氏に、LEICA Sについてインタビューいたしました。

今日はどうぞ宜しくお願いいたします。ライカ S2の方は私の方で一度テストさせていたいたんですけれども、画作りや画質に関して、今回の「ライカ S」は実際にどのくらいかわっているのでしょうか。

画作りについては大きく変えていませんが、ホワイトバランスを若干改善しました。もう一つはセンサーボードを新しくしました。センサーは同じですが、センサーボードを新しくすることによって全般的に合理化および改善した結果、特にシャドーからハイライトまでのコントラストが改善されています。

ダイナミックレンジなんかも広がっているのでしょうか。

そうですね。

値段はライカ S2と比べて変わりますか?

若干、少しだけ値段が上がります。ただ、新しいサービスとして、3年間の延長保証や、24時間の保守サービスなど、修理のときの交換対応や、貸与品の新しいサービスが付帯しますので、より安心してお使いいただけます。

Sシステム自体は主にプロフェッショナルシーンに向けてのシステムだろうと思っていますが、それでもマーケットは色々あると思います。特にどの方面にフォーカスしてカメラ作りを行っているのでしょうか?

プロに向けて、ターゲットを絞り込んでカメラ作りは行っています。その理由は、プロに支持されれば、基本的には他の層のユーザさんにも波及していくだろうと考えていますので、そんな戦略をとっています。実際、そのような形でハイアマチュアの皆様にもお使いいただいています。

ライカ S2も含めて、Sシステムを開発は、いつ頃から構想があったのでしょうか?

2007年にライカ M8を出して、ライカがこれからデジタルカメラを本格的にやっていこうと、会社としてもどんどん成長していこうという時に、マーケットを見ると、特に35mmの世界はかなり日本のメーカーが入ってきていて、競争も激しかった。それに対してミディアムフォーマットは、ハッセルブラッド、フェーズワンなどメーカーの数も多くなく、それほど競争の激しくない市場だった。ライカとしてはこちらの方によりフォーカスすることで、新しい価値を提案できるのではないかと考え、ミディアムフォーマットの構想はスタートしました。

なるほど。

ミディアムフォーマットを作るにあたって、単に新しいミディアムフォーマットを作るということではなく、もっとライカのいろんな伝統や、ライカらしさを注ぎ込んだミディアムフォーマットにしようと。2×3のアスペクト比や、小型であること、幅広く使えること、外に持ち出して使えること、そんなライカのこれまでのバリューを同じように踏襲した中判システムというのを作ろうと思いました。

これは「仕事における質問」というよりは、一人のライカファンとしての質問ですが、ミディアムのフォーマットの方に進出していこうとするとき、いえ、デジタルにおける一眼レフシステムを作ろうというと、どうしてもRシステムが皆さんの脳裏をよぎると想像するのですが、結果的にそれを切り捨てることになってしまったと思うのですが、そのあたりについて、よろしければ伺いたいのですが。

社内で多くの議論がありましたし、当時社内では、Rシステムをやめるということは間違った決断だ、という考えも多くありました。ただライカ S2を作るときに考えていたのは、プロに受け入れられるようなシステムを作って、ライカが本当にしっかりとプロの世界のレースで走れるような機材を作っていこうということなのですね。プロにしっかり受け入れられるシステムをやっていこうという流れにおいては、ミディアムに取り組むのが正解ではないかと考えたのです。

なるほど。

新しい「ライカ M」を見ていただければおわかり頂けるかと思いますが、アダプターを介してRレンズを使えるようになり、デジタルでもRシステムの資産をお使いいただけるようになりました。一般的にコンシューマー向けの35ミリシステムというのは、ミラーレスのような方向になっていくんではないかと思いますので、Rをデジタルでやらなかっというのは、今となっては正しい判断だったんじゃないかと考えています。

当時、ライカS2がリリースされた際、私がテストを担当して記事を書かせて頂いたのですが、その時に私が書いたのは「これは新しいライカ判の定義だ」と。ライカとしては、DSLRやデジタル一眼レフを作るにあたって、既存のミディアムフォーマットでもない、35ミリでもない、その中でベストなフォーマットというか、ベストなパッケージングでこの形を作ったんじゃないか、という風に記事を書いたんですけれども。いまお話を聞いた限りでは私が書いた通りのことをお考えになって作られたということですよね。

はい、その通りですね。

おそらく新型のライカ Sは、ライカ S2のあのリリースのタイミングで出来なかったことをここに今盛り込んで製品になってると想像し理解しています。S2が登場した頃にさかのぼって伺いたいのですが、広く普及しているミディアムフォーマットでもない(645サイズなど)、35ミリでもないフォーマットで、新しいパッケージングのカメラを作ると。とはいえ、中判の世界を見られて、キーデバイスであるセンサーなどは、市場に色々選択肢があったと思います。どんな経緯でこのパッケージングが生まれたのかを、少し伺えないでしょうか。

まず2×3というアスペクト比は、ライカの伝統というところから来ています。センサーの大きさに関しては、35ミリ判との明確な画質の差を確保する目的があります。ただし、ボディサイズは35ミリカメラと同等サイズにするという、両方からのせめぎ合いの中で、一番最適なポイント探ってこのパッケージングとなりました。

なるほど。それでは、今回のリリースされた製品についての質問をさせてください。ミディアムフォーマットで、センサーサイズもそんなに中判の一般的なサイズから比べると極端に小さいというわけでは全然ありません。しかし、このズームレンズなどは、今までの中判システムでは、見たこともないコンパクトさなのですが、技術的なアピールポイントがあれば伺いたいのですが。

一つは、レンズシャッターをもともと搭載しないというコンセプトですので、スペースがいらないということがあります。光学設計的には14枚構成で、かつ最高の硝材を用いて、非球面も3面あるという構成で小さくすることができました。非常に組み立ての難しいレンズで、レンズの組み立て精度を極端に求められるため、製造ノウハウも新しく作り上げなければならなかった。結果としてこのサイズにまとめることができたレンズですね。

今回はシフトレンズなどもリリースされています。我々が理解していなければおかしいのですが、プロのカメラマンの皆さんが、Sシステムに一番求めているレンズというのは、どういったものが今求められているのでしょうか?

一口に「プロ」と言っても、いろんな分野がありますから、例えばスタジオの皆さんはシフトレンズが欲しいだろうし、ウエディングの皆さんは、こんなズームが欲しいのではないかと考えるわけですが、戦略としては、幅広い用途に応えられる、幅広く使える、といったことが実現可能なシステムとして作り上げるようにしています。

例えば、マウントアダプタを提供することで、ハッセルブラッド用のレンズをマウントできるようにしましたよね(アダプター H)。しかし、絞りだとかそういった電気的なところの連動まで出来てしまうという、そんなアダプターを作るということは、それなりに色々とバックグラウンドで大変だと思いますが、そうまでしてSシステムを世の中に広めようと今努力されている訳ですけれども、実際開発に携わっている皆さんで、今のこのマーケットにおけるSシステムを、これからどんどん波及加速させるためには、これから何をしなければいけないと考えておられるのでしょうか。

一つはレンズのラインアップをきちんと作り上げることがまず大事です。今回Sシステムで初となるズームレンズや、また超広角の24ミリのレンズを発表しました。カメラ本体に関しては、ISO感度のフレキシビリティを高め、高いISO感度にしてもノイズの少ない画が撮れるという方向に行ければ、より広い用途にも使えるカメラになると思いますので、そんな方向性も追っていかなければならないと考えています。

これは下衆な質問かもしれませんけども、朝にも少しお聞きしましたが(ダニエル氏に)、もっと売れてよいカメラだと思うのです。もっと売れてよいカメラなのですが、既存でプロフェッショナルのユーザーが持っているシステムを一斉に投げ打って、このカメラを買って新たにレンズのラインナップを自分で買いそろえるとなると、かなり価格的にインパクトがあると。もう少しプライス抑えたシステムを作ることはできないのでしょうか。

導入のハードルを下げるという意味で、ハッセルブラッド用の「アダプター H」を開発しました。新たにレンズを揃えなくても、今お持ちのハッセルブラッドレンズを使ってライカ Sシステムのカメラで撮影できるというソリューションを提供することで、ライカ Sシステムを導入しやすくなるという大きなアプローチだったと我々は考えています。価格についてはクオリティを追求した結果こうなり、また、3年間の延長保証などのサービスも含まれているので、妥当だと思っています。あと、ライカカメラ全般にいえることですが、中古になっても値下がりが少ないので、一つの財産として考えていただけると思います。システムが認知されて、信頼を得て、プロもアマチュアも高いお金を投資するには時間がかかりますが、まだ初めて2年半ですから、これからががんばり時かなと考えています。

なるほど。確かに、全く新規からシステムを構築するとなると決して高いものではないと感じます。むしろこのシステムの完成度ですから、安いと感じる部分もありますね。先ほどソリューションとしてマウントアダプタの提供を行ったと伺いましたが、現在提供されているもの以外を検討することはあるのでしょうか。たとえばコンタックス645用だとか。いかがでしょうか。

今後、新たなアダプターについても、状況に応じて検討していこうと思います。

なるほど。今日はお忙しい中、ありがとうございました。

ありがとうございました。

 

 

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