Leica Camera AG、CEOであるAlfred Schopf(アルフレッド・ショプフ)氏に、「ライカ M モノクローム」について、そして現在ライカがとても元気な理由についてインタビューいたしました。

まず、「ライカ M モノクローム」 (以下、MMとします) についての質問です。アイデアはあっても、なかなかリリースの難しい製品だと思います。ある意味、ライカだから出せた、そんな風に捉えていますが、いかがでしょうか。

ライカとしては、MMのようなカメラを開発にGOサインを出し、製品化できたことについて、大変意義があるものだと考えています。中に入っているデバイスは・・・ご存知の通りカラーフィルタを取り払った特別なセンサーです。解像力そして階調特性に素晴らしいものがあります。さらに、高感度の特性もよく、ノイズを気にする必要がありません。従って、たとえばディスコなど、そんなシーンを撮っても、大変雰囲気のある写真を撮ることができます。「マインドグローイング」と言うのでしょうか、非常に心に訴えてくる写真を撮ることができます。既に数多くのカメラマンの皆さんがトライしていますが、正直なところ我々が思った以上に、特徴的というか刺激的、まさに「マインドグローイング」と呼べる写真ができあがって、本当に驚いています。モノクローム専門のギャラリーというのがありますよね? そんなギャラリーを我々もやれたらと思うぐらいです。

MMのようなカメラをユーザがライカに望む、そんなニーズがあること、そして直接的なリクエストも色々と舞い込んでいたと想像しますが、具体的に製品化について、どれぐらい前から構想があったのでしょうか。

実際は4,5年前ぐらいから構想はありました。しかしその頃は経営的に楽だと言える時期ではなく、また技術的にもリリースするには納得できるレベルには無く、なかなか難しかったんです。その後、経営的にも技術的にも好ましい状態になってきました。センサーを開発していた会社ともよい仕事が出来まして、それで実現の方向へ進むことができました。どのくらい画が良くなるのかについては、実際にやってみないと分からないところがありましたが、結果をみると、まったく予想以上の素晴らしいクオリティの画が出ることが分かりました。また、製品化の過程では色々なアイデアもありました。たとえばフイルムカメラのように、液晶モニタを取り払い、その場で画を確認できないとか。

なるほど。噂では随分出回っていましたよね、「液晶が無いらしい」とか(笑)

そうですね(笑)

まだフイルムのM型は作られていますよね? そんな中、デジタルでもMMのようなカメラをリリースされる。このあたり、一人のライカファンとしては非常に面白いなと感じるのですが。

我々は「本物」を作り続けている。そんな風に考えています。レンズであればガラスであり、プラスチックは使わない。そんなコンセプトでずっとやってきてます。MMはデジタルでありながら少し懐古的なアナログ的な所がありますよね。常にライカというのは、伝統と一貫性を大切にしています。つまり、カメラがデジタルであるとか、アナログという意味ではなく、我々はある意味「アナログ」なんですね。世界で最大のアナログのカメラ会社はライカということですね。

ユーザの中には、まだモノクロームのフイルムにこだわっている方もたくさんいらっしゃいますよね。

はい。2012年5月にベルリンで開催したイベントで、賞をお渡ししたドイツの女性カメラマン、バーバラ・クレムさんは、まだアナログにこだわっていらっしゃる方なので、記念品として「ライカ M7」を差し上げたんですね。彼女のようにデジタルではなくフイルムで撮り続けたい、そんな方もまだおられます。だからMMを彼女に紹介したのですが、MMですら、まだちょっとということでした。やはりまだアナログがいいと(笑)

なるほど(笑)フイルムであったとしてもデジタルであったとしても、ライカとしては撮り手が使う道具を伝統一貫性に則って提供していると。そういうことですね。

他社のカメラを使うプロのカメラマンの方々が、結構プライベートではライカを使って頂いていたりと、写真を撮るという直接的な目的以外でも、ライカに価値を感じて頂いているという点もありがたいと思っています。来週月曜日に新製品発表会がありますので(*)、新製品を見て頂けたら、お話ししたように伝統に則った商品をしっかり出していくということがお分かり頂けるかなと思ってます。ずっと忙しくしていたのですが、この2日くらいに前になって、今ナーバスになってるんです(笑)。必ず、成功すると思っていますが。より進化に趣を置いたような、そんな商品もありますし、またファッションなどの観点から面白い提案する商品もありますし、驚いて頂けるかなと思います。

* インタビューはフォトキナ開催前夜、ライカ新製品発表会の2日前に行われました。

それは本当に楽しみですね。昨今、革新的なカメラで凄みを感じさせられながら、何だか楽しくなるようなカメラも同時に企画してリリースできてしまう、そんな印象をライカに感じています。そして市場の期待に応え、目下絶好調と感じますが、その要因はどういったものなのでしょうか。

先ほどの伝統と一貫性を重んじるということもありますが、開発手法にしてもステップ・バイ・ステップに革新的に。そして「革新」そのものも、少しずつ進化させて積み上げていく。そんな開発の仕方をしていまして、それが今のところ、非常にうまく働いているのではないかと考えています。少し話が逸れますが、フォトキナでは「ライカの99年」という本を出しました。内容はライカの様々な説明というのもあるんですけども、もっと一般の人にも焦点をあてた、そんなエピソードみたいなのも入ってます。たとえば南フランスのライカファンのお肉屋さんのお話です。すごいコレクターの方で、ライカがお肉屋さんの中にあったりとか、お客さんのカメラを修理もしてくれたりということなんです。アンリ・カルティエ=ブレッソンがお金が無かった頃に、そのお肉屋に、俺のカメラと肉を交換してくれと言ったという(笑)まぁ、そんなエピソードなどが入っています。とびきり有名な方が使っているというエピソードももちろんですが、一般の方にまつわるライカのエピソードもすごくたくさんあったりすのです。それはライカにしかないストーリーかなと思います。こういった事も今後紹介していけたらなと思っています。

(ここで残念ながら時間切れ)今日はお忙しい中本当にありがとうございました。

こちらこそ。写真も撮られますか? どこがよろしいですか?

・・・と、ちゃっかりライカツリーの前での撮影をお願いしました(笑)

 

 

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