LIVE LEICAと銘打ったコラム集。せっかくですから海外にびゅーんと飛んでライカで切り取る光景を皆様に・・・と目論んではみるものの、編集長の「じゃ、自腹で」というファンタスティックな一言がツバメを連れて返ってくるのは目に見えております。まあしかし、お金と時間をかけさえすれば佳い物ができるというものでもありません。カメラを一度抱えれば、踏み出す1歩から旅行みたいなものです。そこで、できる限り電車と徒歩だけで、カメラを抱えて東京のド定番観光スポットを再探索しよう、それがこの「ライカで東京感光」となります。だ、誰ですか!?「あーあー」なんて反応されているのは。予定調和というのは結構心地よいものなのですよ。・・・首都圏に住んでいても、いわゆるド定番スポットというのは案外足が向かないものです。「さあ、どこか撮りに行こう!」なんて時は、みなさん大抵遠出されるのではないでしょうか。「ライカで東京感光」では、(1)誰でも知ってる(2)すぐに行ける場所に(3)ライカを抱えて(番外編あり)(4)撮って(5)食べて楽しむ、とまあ、こんな具合でございます。

昔の人はよく言ったもので、光を観ると書いて「観光」ですよ。なるほどですねえ。しかし我々編集スタッフはどちらかといえば、そんな高尚なものではなく、台本無し、経費無し、記事になるかどうかわからないままに、お腹が空いたら(?)とりあえずカメラを握って、入稿成就という光に導かれるままに出かけるという。そんなわけで「東京感光」と名付けました。観光地での出来事はもとより、カメラやレンズの魅力についてもお伝えして参ります。

初回はアイドリングとまではいかない、クランキングという次元で(キーを回しただけ)、「もんじゃが食べたい!」というスタッフのつぶやきそのままに、月島まで出かけてまいりました。こんな調子で、例を挙げれば浅草・柴又・谷根千(見事な例ですね)と色々なところを巡ってまいります。そのうち、ヨドバシフォトギャラリー「インスタンス」で「東京感光写真展」なんかを目論みたいのですが、いやはや、どうなることやら。それでは月島レポートいってまいりたいと思います。

本日のお供はライカX1とM3です。いいですねえ、何台あってもいい。なんてことを書くとですね、「これだからライカユーザーは」なんて言われちゃいそうなのですが、ハイ何を隠そうわたくしもかつてそう思っておりました。写真を撮る以上、カメラという機械には必ず接するわけで、切っても切れない関係にあります。したがって、カメラを必要以上に撫で回してニタニタしてもいいじゃないですか。そんな楽しみ方があってもいいと思うのです。素晴らしい作品もカメラ無しには生まれないのです。もっと愛するべきなのです。身体は一つなのに、そんな沢山のカメラを・・・とか、いいんです。靴だって、スカートだって、ネクタイだって幾つも買うじゃないですか。だんだんうちの奥様に言い訳してるようになって参りました。本題に入りまして、ライカX1。何やら先日アップいたしました、X100との比較記事を周りが読んで「X1いいねー!」なんて筆者の意図をまるで無視したコメントを多数いただきました。(X100とX1の性格の違いの面白さを伝えたつもりなのですが)X100はX1のほぼ半額に近いわけで、実力・コストパフォーマンスともに素晴らしいカメラです。実際触っていても凄く楽しいカメラなのです。しかしライカユーザはどうも渋い色味が好きなのか、単に赤いバッジが好きなのか。そんなことはさておき、確かにX1は価格相応の素晴らしい写り。今回フイルムでも撮影いたしましたので、少しX1との比較カットを掲載したいと思います。・・・欲しくなりますよ、X1。

ライカX1で三眼レフ(嘘)。前回のレビューを見て、編集スタッフ1人がX1をお買い上げ。知り合いがX100をお買い上げに。ご苦労様でございます。


月島と言えば「もんじゃ」。そして西仲通りを思い浮かべる方が多いと思いますが、明治の時代に埋め立てられた土地で、写真を撮るには水辺もなかなか面白いところです。上の写真のように、暮れなずむ街並みに水上バスなど、このあたりならではの光景が楽しめます。M型ライカなら焦点距離にもよりますが1/30程度までは、ブレずに収められそうなので、夕方に明るいレンズをつけて撮影すると面白いと思います。 さて、とりあえず中途半端な時間帯に到着しましたが、X1とM3をカバンから取りだします。そもそも画角が違うのですが・・・左側がLEICA X1、右側がLEICA M3とElmar 3.5/5(戦前のA型ライカに付いていたもの)となります。皆さんもご存じかと思われますが、デジタルとフイルムでは、フイルムの方が格段にデフォルメされた画といえるでしょう。現場で写した筆者の目ではX1の画のほうがリアルです。シーンにもよりますが、デジタルの方が大抵リアリティある描写だったりするものです。しかし私たちの目は長年フイルムの画に慣らされているので、これ程デフォルメ感の強いフイルムの画のほうにリアリティを感じてしまったりするのです。人間の良いところでもあり悪いところでもあるのですが「慣れ」というものですね。面白いものです。しかし、戦前のレンズでこれだけ写ることも驚愕ですが、X1のほうはX1で、妙に立体感と距離感を掴みやすい画です。こんなことだからカメラとレンズが増えていくのですよね、困ったものです。
いいなあ、お婆ちゃん。素敵です。

世代によって役割はあって、それを全うできて。そして、どんな世代になっても安心して暮らせることほど幸せなことはありませんね。

月島の魅力の一つ、路地。

筑地、勝ちどき、月島と、路地を流れるのも一興。やたらとシャッターを切ってしまいます。お住まいの皆さんにお会いしたら、軽く会釈を。

しかし、よく写るレンズです。また、デジタルの画を見慣れるとネガフイルムといえど、かなりの固いのですね、フイルム。

 



路地を歩いていて いつも感じることですが、人は生活の中に自然を織り込もうとするのですね。軒先に置かれた植木鉢に咲く花などを見ると、いいなあと。春らしさも出てきました。・・・現像時にホワイトバランスを変更しています。ウェットな写りでいいですね。


福引きですよ。ピコピコ切り替わる数字ではなく、立体を伴った現物を眺めながら。おじさんは何やらニュースでも確認されていたのかな?ケータイでテレビを。


歪曲収差ではありません。モニターとは湾曲してるものなのです。


履かなくてもわかる、あの懐かしいゴムの感触。X1はなかなかのものでしょう?

どうです この暖簾の質感。暖簾もいいけど、X1もいいですね。振り回すような撮り方や、トイカメラで撮った風の「ほんわか調」には殆ど向かないカメラで、わりとビシっと撮る人に向いたカメラでしょうか。さて、カメラはさておき、本題にまいりたいと思います。

大阪方面ですくすく育った筆者にとって「もんじゃ」とは、よくわからない存在です。お好み焼きと味噌汁とご飯の「お好み焼き定食」なんて、東京では意味不明らしいのですが、関西では東から昇った陽が西に沈むぐらい当たり前の話です。そんな話はさておき、同行スタッフ曰く「もんじゃ」はお店の人に作ってもらうのが一番だそうです。

さくさくと慣れた手つきでお店の人が作ってくれます。ちなみにISO800で撮影。高感度もなかなかで、最短30cmと結構寄れるので、テーブル料理なんかもわりと撮れてしまいます。X1のJPGは色味が渋いので、PCに取り込んだ後、彩度をアップして、若干イエローとレッドを載せると、とても美味しそうになります。料理を撮るなら間違いなくフジのX100のほうがオススメです。X1は哀愁漂う画面構成に使いましょう。

できあがりました。やはり不思議な風体です。完成図を前にスタッフ2人で太極拳でもやってるのかといった具合に、ビシバシ写真を撮ります。仕事でなくても毎度同じことをやってると思うのですが、ファインダーを通して物事を見つめるのが「写真好き」なのでしょうけれど、ハタから見ればかなり異様な光景で、皆様も自覚を持たれることをオススメします。(隣のカラム上へ)

そうなんですよね、ヘラで「もんじゃ」独特の食し方なんて押さえずに、終了絵図となってしまうもんです。今回「撮るのを忘れた」なんてことが無くてホッとする次第です。しかし粉物食べておいて、右にあるのは何でしょう。

「んー画的にインパクトが足らん。すんませーん、牛タンとげそバター、ほたてバターね」「えええーーー」

いわゆる「シズルカット」です。ちなみにお好み焼きにあまり近づけすぎないのが得策です。

もの凄い達成感と後悔の念が同時に押し寄せるディナーでした。店内は常に満杯。明らかに地元の皆さんのような。鉄板挟んで恋人と、家族と、お友達と。いずれにしてもコレが楽しい、もんじゃ・お好み焼き・鉄板焼きです。子供の頃親に連れてきてもらうと本当に嬉しかったのを覚えています。カメラ片手にどうですか?

写真を趣味としてはじめるまで、知らなかった楽しみが「撮り歩き&食べ歩き」。人それぞれの意味があるとは思いますが、写真を撮るということは少なくとも「見る」ということにつながります。撮りたいから出かける、撮るから見る、いつしか暇さえあればカメラを抱えて、家に居ることが無いという。そして「見る」は「知る」です。「知る」と「解ろうとする」。この連鎖は、写真やカメラという趣味の領域を飛び出して、ぐっと日々を楽しくしてくれます。正直、その土地の物を食す楽しみなんて、写真を撮るようにならなければ全く出会うことの無かった楽しみです。その土地ならではの料理へのアプローチを見ると、実に色々なことが紐解かれて解ります。

毎回ロケハンを行ってからの撮影行ではありませんので、お店への事前了解などのプロセスが踏めません。しかし、今後はできる限り撮影場所やお店の情報を掲載していきたいと思います。皆さんも、ぜひカメラを抱えて遊びに行ってみてくださいね。きっと楽しいと思います。(文・撮影:K / 同行スタッフ M,ISHIZUKA)

いいでしょ? LEICA X1。今後も活躍してもらう予定です。

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