LEICA X1とFUJIFILM FinePix X100。2台のXを比べてみる。

「FUJIFILM FinePix X100」。ライカ・レンジファインダーフリークの皆様も気になっている人が多いのではないでしょうか。「寄れる」サブ機として、または荷物の量を減らしたいときの1台として、さらには普段使いのカメラとして。気になる理由は大きく3つではないでしょうか。

(1)APS-Cサイズのセンサーを搭載 (2)光学&EVFファインダーを搭載 (3)レンジファインダー的なルックス・・・といったところでしょう。そこで今回、同じくAPS-Cサイズのセンサーを搭載するLEICA X1を対抗馬に、実際の撮影においての使い勝手や、それぞれ作り手の設計思想等について追ってみたいと思います。

それぞれのカメラで撮影したものを左右に分けていますが、どちらがどちらでしょう。言うまでもありませんね。左がX100、右がX1です。ホワイトバランスは共に「AUTO」、ファイルフォーマットはメーカーの色が出やすいJPGでそれぞれ撮影しています。なんだか、フジとコダックの色の違いのようです。

X100はまさに「プロビア」のようで、X1はコダックの「ポートラNC」のようです。X1の色再現はとにかく渋いのが印象的です。印刷物の色調が国によってまるで違うのと同様に、やはりお国柄の違いでしょうか。この違いだけでも必要に迫られるかはさておき(?)、2台持つ価値はありそうです。

それぞれJPGで撮影。左がX100、右がX1となります。X100にはダイナミックレンジを拡大する機能がありますが、OFFでの撮影です。ハイライトの飛び方はX100のほうが素直で、中間の調子も柔らかい印象です。対してX1はわりと唐突気味で、固い調子です。

ハイライトの描写傾向を見ていると、X100はポートレートなどによさそうな雰囲気です。対してX1はシリアスなシーンに向きそうです。後述しますが、それぞれのレンズ特性自体も、それに合致する印象です。


上がX100、下がX1となります。さて、まず2台は開放値が違います。X100はF2、X1はF2.8。1段の違いは大きく、この違いはそのままレンズの向け先も違ってきます。レンズの特性自体は、X100が絞り込むにつれシャープにはなりますが、X1に比べて幾分柔らかい印象です。X1は開放から猛烈にシャープな印象で、絞り値による描写変化もあまりありません。一般的にはX1のほうが優秀と評されるのでしょう。

しかし、最近のデジタルカメラは、かなり画素数が上がってきたこともあって、もう少し曖昧に写って欲しいと感じることもあります。そんなとき、X100のレンズ特性は面白いと感じます。またきわめてフイルム的な画作りであり、レンズ特性と重なることで、デジタルのどこまでもクリアな感じと違った、フイルム的なくぐもった描写が得られるので面白い。対してX1はX1で、この特性を活かせるシーンがあります。いずれにせよ選択肢が多数あるのは嬉しいことですね。


最短については10cmと、X100のほうがダントツに寄れます。ただし、少々無理があるのか開放で撮影すると随分ほんわかとした写りです。対してX1は30cm。このあたりはメーカーの考え方そのものなのでしょう。X1の30cmは、それでもある種「寄れる」と感じてしまいます。

両機ともマクロモードに切り換えての撮影ですが、コントラストの無い被写体だとまずAFは迷います。したがってMFに切り換えての撮影となりますが、X100のフォーカスリングはなんとも回転角が小さく、ピントを追うのが結構大変で、MFのしやすさはX1に軍配が上がります。


それぞれ絞り開放、ISO1600にて撮影。左がX100、右がX1となります。両機ともISO1600程度であれば、ほぼ問題なく使えそうで、極めて優秀だと言えます。両機のカットを見比べると、絞り値の違いも印象に与える影響は大きいのですが、ノイズレベル自体は殆ど変わりありません。

X1に搭載されるレンズは、非常にシャープで解像力があります。それぞれ開放で撮ったものを並べると、まるでオールドレンズと現代レンズの違いのような印象です。このあたりは好みの問題でしょう。


それぞれF8まで絞り込んで撮影。上がX100、下がX1。X100のほうがコントラストが高いため、X1のほうが明らかに緻密な描写に見えますが、もし同じような階調再現であればレンズ自体の解像力等は見た目ほど大きな違いは無いと感じられます。しかしX1のレンズの方が若干上でしょう。

X100は開放と絞り込んだ状態では画が明確に変わりますが、X1は開放からずっとこの調子で、とにかくよく写るレンズで感心します。両機共に絞り込んでも極端に固くなったりしないので、扱いにくさは感じません。



上がX100、下がX1。共に開放。X100は周辺落ちがX1に比べて大きい。撮影意図としてはクラウディで日没直前の光景を量感を持って写し込みたかったので、X100の描写特性がマッチ。


若干アングルが違ってしまいました。上がX100、下がX1。撮影意図からすると、ポジ的色再現よりネガ的に。したがってX1の描写がマッチ。

うーん、、根暗な写真が続きまして申し訳ございません。左がX100、右がX1。撮影意図的にはどちらでもOKですが、しかしX1の色味は渋い。

上がX100、下がX1となります。意図的にはあっさり写って欲しかったので、X1のほうがマッチ。しかし、どちらでも構わないといった印象です。撮り比べてみると面白いもので、緑と白の色味がまるで違います。


まず2台の大きな違いは色再現。X100がポジなら、X1はネガです。これで大きく好みは別れるでしょう。あくまで個人的な感覚での表現ですが、X100が情感溢れる描写なら、X1は哲学的な描写。X100がウォームなら、X1は極めてクールといった印象です。カメラとしての使い勝手は似たようなものです。X100はギミックてんこ盛りで、このテのカメラにぜひ欲しかった光学ファインダーを搭載しています。マクロ撮影時にアイポイントでカメラを固定し、MF時にはEVFで拡大表示、フォーカシングの具合もライブで確認できると、佳いこと尽くめのようですが、MFのフォーカスリングの回転角があまりに小さすぎて扱いづらさがあったり、実際の撮影においての使い勝手をもう少し考えて欲しい点などが見受けられます。また、背面の液晶でもEVFでもマニュアル露出で撮影していると、シャッタースピードと絞り値の組み合わせで、かなりアンダー目な選択をしているにも関わらず、煌々と表示される画面(ゲインアップして表示される)。確かにフレームはし易いでしょうけれど、実際の露出をライブで確認できないのは問題を感じます。対してX1は、実に分かり易い。MF時のフォーカシングは適切なレンズ駆動分量で、ピントは追いやすく、きっちり露出と連動した液晶表示だったりします。このあたりは、ターゲット設定とメーカーの考えそのものがダイレクトに出ていると思われます。X100は万人が使うことを想定し、X1はある程度カメラに慣れた人達に使いやすいようにシンプルに最適化されている印象です。

逆にX1はX100に比べると、シャッタースピードダイヤルや絞りダイヤルが、撮影している最中にクリックストップが弱く、だらしなく動き回ったりします。何を優先的に重んじるのか、要するに日本車とドイツ車の違いみたいなもので、つくづくお国柄というものが出るものなのだなあと感心する次第です。X100が自動露出で撮影すると、必要以上にオーバー目の露出に振れる傾向にあり、X1がフレーム内に空の分量が増えれば分かり易くアンダー目に振れるあたり、両機には如実にターゲットの違いを感じます。純粋に描写面ということで比べると、それぞれに個性があって面白いと感じます。X100は調子が滑らかでポートレートなどに向き、絞り値で画が変わる面白さがあり、X1はひたすらクールに被写体を捉える印象です。両者に共通するのはAPS-Cサイズのセンサーを積むということだけで、あとはまるで違います。予定調和的で大変申し訳ないのですが、被写体に合わせて使い分けたいところです。そして、両機とも実によい画を叩き出す、素晴らしいカメラだと感じます。さて、書くのが難しいのですが、両機にふさわしいユーザー像(使い道)をあえて書いてみます。X100は単焦点レンズを搭載した、記録から表現へシフトし始めた方々におすすめのような気がします。X1はこのサイズを必要とし、高いクオリティの画を必要とする方におすすめしたいカメラです。そして、絵筆を取り替えるかの如く、デジタルカメラを使いこなしている方には、ポジ的な描写が欲しければX100を、ネガ的な描写が欲しければX1を、といった感じでしょうか。
(文・作例撮影:K)


生産再開、順次市場に。使っていて面白いカメラですし、光学ファインダー/液晶ビューファインダーのハイブリッドはなかなか楽しい。画もさすがにフジです。フイルム的描写が欲しければマストなアイテム。



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シンプルでストイックなデジタルカメラ。ネガ的な色再現という特性はあっても、フイルム&フイルムカメラ的ものへの郷愁は一切感じられない、真のデジタルカメラ。レンズのクセという特性に頼れない腕が表れる?カメラ。

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