他では絶対に得られない描写がある。これだけ明るいレンズでも、開放からピントを合わせた部分はシャープで繊細。絞りを開けば周囲は蕩けるようにボケていくから、被写体が浮き上がってくるのだ。日常の風景も何気ないスナップも、印象的に仕上げてしまうほどの驚くべき写り。レンジファインダーカメラに似つかわしくない重さと大きさも、この描写を得るためならば、苦ではなくなるはずだ。 心の動いたものにフォーカスを合わせれば、心の動きがそのまま画になってくる。「見えているもの」ではなく「見たいもの」が写る。それがこのレンズの醍醐味である。何気ないシーンも、心象風景のように。人を写せば、とびきりのポートレイトに。いつも暮らしている世界が、きっと少し変わって見えるだろう。そして扱いに慣れてきたら、大切な時にも使ってみてほしい。一度しかない場面をこんなレンズで上手く写せたら、きっと最高の1枚になる。