Leica M Monochrom Typ246, Leitz Elmar 3.5cm F3.5, Photo by Naz

ライカ×モノクロ×オールドレンズ カメラひとつで旅に出る。

第一回 成田山・佐原編

撮影旅行というと、綿密な計画を立てて、大きなカメラバッグにお気に入りの機材をいくつも入れて…というものをイメージしますが、夢見ても現実にはなかなかそんな旅には出られないものです。そこで、今すぐ実現できるシンプルな日帰り旅をしてみたいと思います。機材もカメラ1台・レンズ1本という最小限にしてみましょう。しかもカメラは「LEICA M Monochrom」。鬼の24回払いもようやく半分が過ぎた私物でございます。フォトヨドバシとしましてはボディもレンズも現行品をご紹介したいところですが、このコラムではもうちょっとゆるい感じにしたいなと、あえてオールドレンズに縛ってみます。カメラバッグも持たず、カメラは肩から提げていきます。移動は主に鉄道で…となりますと、ちょうど「青春18きっぷ」の夏期利用期間(7月20日〜9月10日)が始まったばかりです。せっかくですからそれを利用してみましょう。まだ梅雨の明けない霧雨が降り続く1日でしたが、たまにはそんな天候の中行く旅も悪くないはず。今回は成田山と佐原の町を訪ねてみようと思います。朝の10時、新宿駅で切符を購入し、この旅がはじまりました。

( 写真 / 文 : Naz )

PHOTO YODOBASHI旅のスタートは「まずは腹ごしらえ」といきたいところですが、それは少し我慢。錦糸町で快速へ乗り換えます。運良く成田方面へ向かう「快速エアポート成田」に乗車できました。しかもこの列車、千葉駅で8分間も停車してくれます。これはチャンスと、停車中にコンコースの売店へと駆け込み、駅弁を購入。昔から千葉駅に来ると買ってしまう万葉軒の「とんかつ弁当」です。1,000円以上の豪華な駅弁が珍しくない昨今ではありますが、こちらのお値段なんと500円。千葉駅から成田駅までの30分ほどの間に食べ終えられる軽めの量もちょうどよいです。ロングシートでの飲食は気が引けますので、旅感高まるクロスシートに座り、北総の田園風景を眺めながら美味しくいただきました。

※記事執筆の都合もあり、モノクロオンリーではいろいろお伝えしにくいと(苦笑)、メモ用にコンパクトカメラも1台携帯しております。

Leica M Monochrom Typ246, Leitz Elmar 3.5cm F3.5, Photo by Naz

東京生まれの私は成田山というと「初詣」を連想します。調べてみると初詣の参拝者は明治神宮に次いで全国2位だそうです。成田空港へ行く用事は時々ありましたが、成田駅で下車して成田山へ参拝するのは実は初めて。近代的な駅前ロータリーから始まる表参道は、昔の門前町の雰囲気を色濃く残していて、歩いているだけで楽しいものです。まずは酒蔵の軒先でパチリ。オールドレンズの、特にエルマーらしい柔らかい描写が雨に濡れる光景を優しく捉えてくれます。

Leica M Monochrom Typ246, Leitz Elmar 3.5cm F3.5, Photo by Naz

Leica M Monochrom Typ246, Leitz Elmar 3.5cm F3.5, Photo by Naz

数百メートル続く参道は途中から下り坂となり、その坂を下りきったところで山門をくぐります。広く立派な境内、小雨降る平日ということもあり、人も少なくゆっくり時間をかけて参拝できました。場所柄もあるのでしょうか、外国からのお客さんも多く見かけます。家族へのお土産にお守りをひとつ購入。「健康第一」です。

Leica M Monochrom Typ246, Leitz Elmar 3.5cm F3.5, Photo by Naz

モノクロ写真の好きなところは、カラー写真のように色彩ではなく光と影を写すところ。写真がデジタル化したことにより、HDRのようにすべてを写し撮ることもできるようになりましたが、モノクロ写真はむしろその逆で、眼前の光景から色さえも抜き取って被写体をより抽象化してくれます。「引き算」で画を組み立てる感じでしょうか。自分でも写真が暗いな〜とよく思いますが、この日は天候もあっていつもより黒が多めになっております。レーザープリンタで印刷するのはやめてほいた方がいいかもしれません。

Leica M Monochrom Typ246, Leitz Elmar 3.5cm F3.5, Photo by Naz

参拝前に下った坂道も、帰りは上り坂となります。この付近一帯に漂う、鰻を焼く匂い。恐ろしい誘惑です。つい先ほどとんかつ弁当を食べた気もしますが、ここはせっかくですから参道の鰻屋さんにも立ち寄ってみることにします。

PHOTO YODOBASHI老舗の鰻屋さん「川豊本店」。お店の中は参拝客でいっぱい。レジで硬券のような食券を買い、席について待つことしばらく。やってきましたうな重。口の中に山椒の香りとしあわせが広がります。創業以来継ぎ足されてきた「たれ」は濃すぎず、ふっくらと蒸された鰻の旨味を引き立てています。大好きな鰻は、おじさんになっても何か食べる理由が必要な贅沢品ではありますが、幸いにも胃袋にはとんかつ弁当が残っていますので、ちょっと小ぶりのサイズで十分満足。安くあがりました。なお、土用の丑の日を挟んだ2016年7月15日〜8月28日は、参道の鰻屋さんで「成田うなぎ祭り」なるスタンプラリーイベントも開催しているようです。ちょうどいい口実になりますね。

川豊本店
千葉県成田市仲町386
http://www.unagi-kawatoyo.com

Leica M Monochrom Typ246, Leitz Elmar 3.5cm F3.5, Photo by Naz

店先で鰻の串打ちをしていました。職人さんの手さばきが光ります。お店の方に許可をいただき、ここでもパチリ。撮影に集中しすぎて他のお客さんの邪魔にならぬよう注意しましょう。

Leica M Monochrom Typ246, Leitz Elmar 3.5cm F3.5, Photo by Naz

Leica M Monochrom Typ246, Leitz Elmar 3.5cm F3.5, Photo by Naz

晴天の光の下では日本の古い建物は黒く潰れてしまいがちですので、こういう弱い光の方がトーンを残して撮りやすいですね。古いスクリューマウントのレンズ、最短撮影距離は1mとほとんど寄れません。それが結果として無理のないレンズ設計に結びついているのかはわかりませんが、最短付近で撮ってみるとこの通り。F5.6、オールラウンダーではありませんが、条件を整えてあげれば現代レンズにも遜色がないほどよく写ります。

そして、佐原へ。

成田から再び電車に揺られ30分、佐原には「小江戸」とか「小京都」といわれる、江戸時代末期から昭和初期にかけて建てられた古い町並みが小野川沿いを中心に広がっています。千葉県では唯一の「重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)」に指定されていますが、小江戸で有名な川越に比べると規模では同じかそれ以上ならがも観光客はずっと少なめ。じっくりと写真を撮るにはむしろいいかもしれません。

Leica M Monochrom Typ246, Leitz Elmar 3.5cm F3.5, Photo by Naz

かなり暗い写真になってしまいましたが、空が白飛びせず、石造りの岸壁が潰れてしまわないところを慎重に狙ってみました。実際にはもう少し明るかったですが、雨に煙る感じは出たのではないかと思います。左端に写り込んだ柳の葉はご愛嬌ということで。

Leica M Monochrom Typ246, Leitz Elmar 3.5cm F3.5, Photo by Naz

昔から豊かな土地だったのでしょう、古い町並みが連なる川沿いだけでなく、町全体に歴史ある建物が点在しています。写真は今から127年前(明治22年)に建てられた与倉屋の大土蔵。今では500畳の広さを活かしてイベントやコンサートも行われているそうですが、往時はここで醤油づくりが行われていたそうです。

Leica M Monochrom Typ246, Leitz Elmar 3.5cm F3.5, Photo by Naz

佐原には伊能忠敬の旧宅があり、案内板によれば全国へ測量に出る前の17〜50歳までこの地に住んでいたとのこと。古い町並みの近くには伊能忠敬記念館もありましたが、今回は時間が遅かったこともあり、訪ねた時には閉館していました。開館時間は9〜16時半だそうです。

PHOTO YODOBASHI雨の中、町を2周ぶんほど歩いたでしょうか、足を休めようとギャラリーや甘味喫茶もあり、食事もできる「いなえ」に立ち寄りました。伺った時は甘味のみのメニューとなっていましたが、空腹でない私には好都合。足りない糖分を補おうと黒糖ミルクと胡桃のかき氷をいただきました。器からこぼれそうなほどのたいへん大きなかき氷。控えめの甘さとふわふわの氷が香ばしい胡桃とよく合い、かき氷を食べて久しぶりに感動しました。古い建物を上手に活かし、現代的で洗練された店内や窓から見える庭も含めて素敵な時間が流れている空間でした。

いなえ
千葉県香取市佐原イ511
http://sawara-inae.com

Leica M Monochrom Typ246, Leitz Elmar 3.5cm F3.5, Photo by Naz

日が長い季節、お店を出ても暗くなるまでまだ時間はあります。そこで「いなえ」から徒歩数分の銭湯「金平湯」にも立ち寄ってみました。小さな銭湯ですが、その歴史は100年以上と古く、実にいい雰囲気。先客がいたため写真は撮れませんでしたが(ネット検索をしてみてください)、入浴料はわずか300円、少し熱めのいい湯でした。入浴後は火照った身体を冷ますように、日が落ちて薄暗くなってきた町をゆっくりともう1周歩いてみます。マジックタイム、モノクロ写真にとってはおいしい時間です。

Leica M Monochrom Typ246, Leitz Elmar 3.5cm F3.5, Photo by Naz

Leica M Monochrom Typ246, Leitz Elmar 3.5cm F3.5, Photo by Naz

旅の終わりに。

明かりが灯り、暗くなってきた18時半頃、佐原駅まで戻ってきました。時刻表で次の普通列車を調べてみたら19時21分発。最短ルートで帰っても、新宿へ辿り着くのは21時半を過ぎるそうです。3時間もかかるのかと苦笑いしつつも駅前のお店で缶ビールと乾きものを調達してクロスシートに身体をうずめます。文庫本を眺めたり、うとうとしたりを繰り返し、22時頃に我が家へ帰宅。12時間ほどの小さな旅でしたが、古い町並みを散策してたっぷり写真を撮り、旨いものも食べられて満足な1日となりました。スマートフォンによると、歩いた距離は11.72km、16,890歩でした。普段、ロケやロケハンなどで様々な場所へ出掛けてはいますが、好きなカメラ1台だけを持って行く鉄道の旅なんて、実はいつ以来だか思い出せないほど。ライカとモノクロとオールドレンズというちょっとした縛りは、この旅を面白くしてくれるスパイスになってくれたような気がします。

PHOTO YODOBASHI購入から1年半を経て、M Monochrom Typ246はようやく7,000ショットに届きそうです。カラーフィルターを廃した専用のモノクロセンサーは、補完処理がありませんから、ピクセルひとつひとつに曖昧さがなく、センサーが捉えた光を緻密で鋭く描き出してくれます。その性能を存分に発揮させるなら、高い光学性能を持った現行レンズの出番となりますが、このカメラはオールドレンズをつけても実に楽しい。シャドウのトーンがよく出てくれるので、現代レンズに比べてコントラストが低いオールドレンズと組み合わせてみると、より深く渋いトーンの写真を楽しむことができます。

今回、このカメラに組み合わせたレンズは、1946年製のLeitz Elmar 3.5cm F3.5。ちょうど70歳になった小さな小さなレンズです。そのエルマーにつけるフードはFOOKH。古ぼけた小さなフードが1万円以上するあたりにライカの恐ろしさを感じずにはいられませんが、こうしてレンズと組み合わせた佇まいは、ひとつの様式美ではないかと思わせます。ハイ、病気です。絞りは(沈銅式でお馴染みの)Elmar 5cm F3.5と同様に、鏡胴前面の前玉のフチに小さな指票のついたツマミがあります。これがまた回しにくい代物なんですが、そもそも開放がF3.5ですから「絞りを開けて積極的にボケを活かして」なんて使い方はできません。日中は開放だとフレアが盛大過ぎるので、もう少し絞ってF4-5.6あたりに固定して使っています。フィルム時代であれば日が落ちてからこんな暗いレンズを使うことも難しいですが、ISO感度を自在に設定でき高感度性能も高くなった今こそ、使いでのある1本になったのではないかと考えたりしています。

( 2016.08.04 )




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CMOSセンサーのTyp246になってやや重くなりましたが、高感度特性は大きく改善し、動画にも対応。M8/M9世代から大きさは変わりません。たいへん高価なカメラですが、その価格を裏切らない実力を持ち合わせた特別なカメラです。

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スマートフォンを見れば、方位も地図もすぐ見えますが、ここはあえて紙の地図と手のひらサイズの方位磁石を手にしてみるのも悪くないでしょう。LEDサイドライトもついて暗いところでもちゃんと使える、この夏購入したお気に入りのアイテム。

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