日中の強い光も夕方の挿し込むような光も、オールドレンズで撮影するとすべて優しい光に変わってしまうようです。本当はもっとしっかりとした描写をするレンズのはずで、状態としては決して褒められるものではないのですが、良い塩梅に曇っていることで生み出される独特の雰囲気がこの個体の良さだと思います。一つ一つのレンズの状態が個性として楽しめるのも、オールドレンズの魅力の一つではないでしょうか。

優しい光が溢れた写真は、穏やかで幸せそうな雰囲気にぴったり。大変気に入って使っています。

実はこの個体の最大の魅力と感じているのが、この円形のフレアー。初めてこのフレアーが出た時は、思いがけない描写にゾクゾクしてしまいました。偶然に撮れた一枚ですが、何度か同じ条件を試していくうちに意図的に撮れるようになってきます。そうして誰も真似できない一枚が自分のものになっていくのです。一本一本のレンズの個性が写真表現を広げ、撮影者の個性になっていく。そんな個性を求めてオールドレンズと付き合っていくうちに、いつしか防湿庫の中は個性で溢れかえっていくのです。

（写真／文：位田明生）

よく「どうやっていいレンズを選べばいいのですか」と聞かれますが、実は簡単に考えていいのではないかと思っています。今はデジタル時代、使いたいデジタルカメラとマウントアダプターを持ってお店に行き、実際に付けて撮影してみてください。撮った写真を見て「あっ綺麗」とか「かっこいい」と思えば、それはあなたに合ったレンズ（個体）なのです。オールドレンズは小難しい基準ではなく、相性で選びましょう。怖がらずにオールドレンズと沢山の出会いをしてみてください。そして大好きな一本を見つけてください。