「麻布に十番と付くだけでどうしてこんなに下町っぽくなるのか」それが遠い昔、初めてこの街に来た時の印象でした。真っ黒なお湯の麻布十番温泉はまだ営業中、南北線も都営大江戸線も開通してなくて、ちょっと陸の孤島のような、隠れ家のようなそんな時代の事です。その頃は「この街に遊びにいくときは、ちょっとおしゃれしないといけないのかな」と考えていたことを思い出します。2000年に南北線、2004年に大江戸線が相次いで開通し、陸の孤島ではなくなりましたが、まだ古い街並みと新しいセンスのいいお店が混在した、大事にしておきたいものが沢山ある秘密基地のような雰囲気は健在です。今回はそんな麻布十番をじっくりと散策してみます。

メインで使ったCarl Zeiss Sonnar T* 2/85 ZM。ガラスをたっぷり使ったこのレンズ、いかにも「写ります」って顔をしていますね。さて、今回ぶらぶらするのは以下のようなエリアです。

今日はあいにくの雨。雨の日は写真を撮るのがおっくうになりがちですね。でも雨の日は光が細部まで十分にまわるので、街のディテールを撮るには最高なのです。

今日のお供はリバーサルフイルムのようなコントラストのM9、ローコントラストの光でも最高の写りを見せてくれるCarl Zeiss Sonnar T* 2/85 ZM。コントラストを高めに撮るために選んだ雨の日最強タッグで、麻布十番の大通りから路地まで長玉で風景を切り取るように撮っていきたいと思います。

撮影上のポイント:雨の日は写真の色を少し青っぽくしてみましょう。写真全体にかかった青が、しっとりとした雨の雰囲気を強調してくれます。青っぽくするには、RAWで撮って現像時に色変換する方法もありますが、JPGで撮影の場合は、カメラのWBのケルビン値設定で、ケルビン値を4000K(ケルビン)ぐらいに設定するといいでしょう。日中の太陽のケルビン値はだいたい5000K。カメラのWBのケルビン値設定を5000Kより小さくするほど青っぽく、ケルビン値を5000Kより大きくするほど赤っぽく写ります。

蔦が絡んだ家、古い写真館に飾られた外国人の家族写真、公園で元気に遊ぶ子供、街の雰囲気を壊さないように配慮した新しいお店。麻布十番は、古いものと新しいものが、お互いの存在を認め合いながら混在している。そして生活の匂いを細部で感じられる。そんな街です。

昔ながらの洋食屋さん、焼き魚の匂いに惹かれる和食屋さん、有名なたいやき屋さん、ちょと怪しげな中華屋さん、オープンカフェ、イタリアン、フレンチ。そんなに広くない場所に沢山飲食店がある麻布十番。昼食は迷いに迷ったが、エリンギ、フランク、トマトのおでんに惹かれて大正十年創業の「福島屋」さんへ。ピントが甘くなるため撮影中はアルコール厳禁なのですが、レンジファインダーは酔っぱらいにも優しいファインダーなので(あくまで私見)ビールを一杯注文。エリンギのおでんは初めてでしたが、ビールとの相性は抜群でした。このお店、店内でもおでんがいただけるのですが、おでん種をテイクアウトするお客さんの方が多いみたいです。

雨が上がると街に人が出てきました。そして、立ち話をしている姿があちらこちらで。そしてみんなが笑顔で挨拶している。なるほど、こういう日常的な街の人たちのふれあいが、この街の調和を作っているのでしょうね。

かわいいイラストの「節電中です」のポスター。昔からのお店にも新しいお店にもさりげなく張られていました。街全体で節電を考えようという気持ちが、伝わってきます。

ガラス越しにカメラを見せて撮って良いですかと合図。少しはにかみながら笑顔を見せてくれたオーダーメイドのぬいぐるみ屋さん。送られてきた写真を見ながら、ぬいぐるみを作っていく真剣な表情がキュートでした。

少し日が傾いてきました。残照を感じながら今日の一日の撮影を振り返ろうと、街の中心の広場にある開放感のあるたたずまい「Cafe LABOHEME」へ。気持ちのクールダウンにとよく冷えたシャンパンをオーダー。佳い写真の手応えがあったときは、お酒がおいしいものです。写真に写っているフレンドリーで笑顔のすてきな彼に勧められるまま、もちもちニョッキ、カマンベールチーズのフライ・ベリージャム添えをつまみに、グラスワインを・・・写真、ちゃんとピントが合っているところが、すごいですね。レンジファインダーは、酔っ払いにもピントが合わせられるカメラなのです。

最後の〆は、朝からずっと店頭にぶら下がっている魚が気になっていた居酒屋へ。海の家のように広々としてざっくりとした造りの店内はまだ早い時間だというのにほぼ満席。魚介類の焼けていく良い匂いがたまらなくて、お酒は最初から日本酒を。震災以来東北のお酒を飲むようにしているので、山形県酒田市「上喜元」のカップ酒を頼みました。

お刺身、義援金付き焼き牡蠣と続いた後に「えいひれ頼んでいいですか」と同伴したアシスタント。日本酒の肴に乾きものが得意ではない自分でしたが・・・これが大当たり。写真で見てもお分かりかと思いますが、分厚くてジューシーで、日本酒にぴったりでした。肴がどれも美味しくて、つい仕事中なのを忘れ本格的な飲み会へ。そこへ、先程からちらちらとM9を見ていたアロハの人が「一緒に飲んでいいですか?」と席を移ってきました。

英語を話す彼は、ロンドンでカメラマンをやっているとのこと。彼の作品をiPadで見せてもらいながら、お酒は進みます。ライカの話題から始まって、写真の話、音楽、世界情勢・・・気がつけば、ずいぶんと東北に貢献してしまいました。写真好きには気になるライカ。そんなライカだからこそ、人と人との垣根を低くできるのでしょう。そしてライカを中心にいつの間にか輪ができてくる。ライカは人を呼ぶとは思っていましたが、やっぱりそうですね。でも後で冷静に思い出してみると、彼はライカに惹かれたのか、同伴者の若い女性に惹かれてライカを出汁に使ったのか・・・。

いろいろな魅力が小さな街にぎっしりと詰まっている秘密基地のような麻布十番で、撮影、散策、はしご酒。最後は不思議な出会い。
ライカでぶらっと散歩する楽しさは、こんなところにあるのでしょうね。

ライカ M9 ブラックペイント
居酒屋でも大注目のM型デジタルライカ。話のタネにこの価格? いや、この性能だからこの価格なのです。スナップを愛する皆様へ。
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カールツァイス ゾナー 85mm/F2.0 ZM
望遠レンズで街を切りとるのも、スナップの面白さです。すこし大きなレンズですが、写りは抜群。このレンズならではの世界を、写し取ってください。

※残念ながら販売終了となりました。

 

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