前回のレポートでは、いきなりマウント改造品のCarl Zeiss Hologon 16/8でした。次はやっぱり「オールドはどうなんだ??」と来ますよね、当然ながら。先に結論を申し上げておきます。オールドはなかなか一筋縄ではいかないといった印象で、只今試行錯誤のまっただ中です。想像するに、少し暗めのレンズが相性がよいのではないかと想像しています。たとえば赤エルマー、たとえばズマロン3.5cm(f3.5)や、ズマロン2.8cmあたりでしょうか。このあたりを「ほほう」と思われる方は、かなり重度のレンズ過食症に陥ってる方だと拝察いたします。寛解は「買って確かめる」ことでしか迎えられないのでツライところですよね。・・・つまり、わりと輪郭がキリっと出て、力強い描写のレンズが向くのではないかと想像するのですが、これからゆっくり一つ一つ確かめてみたいと思います。さて、今回はわりと手頃で身近な固定鏡銅のズミクロン5cmです。中心はキリっと、周辺はなだらかに落ちていく味わい深い名レンズですが、こちらを試してみました。オールドレンズとのマッチングを探る参考にして頂ければ幸いです。

( 写真・文 / K )

レンズ中心の解像度が凄まじい・・・なんてのは昔の話。恐らく何十人、ひょっとすると何百人という人の手を渡ってきたレンズに、新品と同じような性能を求める方が酷な話で、たまに「大当たり〜!」と太鼓を誰か叩いてくれませんか??というレンズに出会うこともありますが、中古レンズ選びは基本的に泥沼の世界。そんな話はさておき、筆者が所有する本レンズは「わりと良いなあ」と感じていたレンズです。フイルムはもちろん、EPSON R-D1やLEICA M8/M9でもオールドらしい描写で魅せてくれたレンズです。しかしM MONOCHROM(以下、MMとします)にマウントすると、ちょっと心許ない。もちろん悪くはないのですが、どうも少し締まりの無い画になるのです。SUMMICRONらしい描写は相変わらずなのですが、コントラストは甘く、中心と周辺の解像力の差が目立ち、「う〜ん」と首をかしげてしまいます。

京都、川端団栗角にあるおでん屋さん「蛸長」さんにて。一見さんでも構えることなく居心地の良い空間で、季節折々の素材で楽しませてくれるお店です。その昔、土門拳さんも京都撮影の際によく通われたそうです。・・・すみません、「一枚撮りま〜す」なんて言いながら、あえて端っこにフレームしてしまいました。背景のボケ味は鉄板の上に粘度のある油を垂らしたかのようなSUMMICRONのボケ味そのもので、癖がよく再現されています。また画面真ん中と端の描写の違いが出ています。M9もローパスレスで曖昧さが介在しないカメラですが、MMはセンサーの素性上さらに緻密にキャプチャしてしまいます。したがって、画面中央部と周辺の描写の差異もくっきり写ってしまう(目立ってしまう)というわけですね。「まあ、レンズっちゃそんなもんだ」といえばそれまでですが、問題は現行のレンズ群のズバ抜けた写りとMMを組み合わせたときの形容しがたい画の凄みが基礎体験というか妙な先入観として頭にこびりついてしまっていると、どうも「う〜ん」としっくりこなかったりするのですね。贅沢な話なのですが。もちろんいきなりオールドのレンズばかりマウントしていれば、まったく感じない違和感かもしれません。MMが叩き出す他では得がたい豊穣な階調に感じ入るだけかもしれませんね。


とりあえず先入観はさておき。立ち並ぶ鉄製の柱群をとらえたカット。ザラ目のフィニッシュが施された柱ですが、このサイズまで縮小してしまうとその雰囲気もよくわからなくなってしまいますが、原寸で見ると目の一つ一つまで解像しています。SUMMICRONの中心部分の解像力はつとに有名な話ですが、そのとおりの描写に。またこの時代のレンズは現代のものほどコントラストは高くなくても、階調は豊富。現場でアンダー側に露出を振る余裕を与えてくれます。


MMと比べると、R-D1からはじまったM型レンズを使えるデジタルボディでは、ある意味オールドレンズに寛容だったのかもしれません。1画素が1ピクセルに直結するMMでは、その素直で驚きの解像力と同時に、癖までもダイレクトに捉えてしまうのでしょう。たとえば、開放では球面収差が多く、点光源が入るような夜のシーンで、SUMMILUX 35mm(球面)を使うときは、手ブレ限界と相談しつつ、最低でも半段・できれば1段はなんとか絞りたい、なんてことをその昔にはやっていたわけです。それをちょっと思い出しながら使う、そんなことを強いられるカメラ、それがMMといった印象です。もちろん「レンズは開放でしか使わん!」と、神々しい姿勢で臨まれてもOKですが、"作法"を思い返しつつ騙し空かしつつ使うのも、これまた一興。この"一興"がなかなか濃いので、また楽しいですよね。


絞り込むと画面全域がキリッとして、文句の付けようが無い描写になります。スケッチをしている男性にピントを置いていますが、原寸で見ると、とても経過した時間からは考えられないようなシャープさ。


最初開放で撮影して液晶モニタを見ると、広告ボードのあたりが少しすっきりせず、柱のエッジラインにもシャープさが欲しい。2段絞り込んでこんな感じです。


どんよりと暗く、雨が降りそうだった時の1枚。もともとウェットな写りをするレンズですが、こちらは湿度そのまんまに写ってくれればいいやと、開放で撮影。同じようなシーンでローパスを搭載しているカメラであれば、もっといろんな意味で全体的にフラットな画になると思われます。

シリアルが150万番台なので、M型用レンズでも最初期の部類のレンズ。オートマチックにシャッター切れば、とにかく良く写るなんて今時のレンズのようにはいかないのが面倒くさいと感じるか、楽しいと感じるか。MMと最新現行レンズとの組み合わせによる凄みのある画、このインパクトを越える画をまだオールドでは味わったことがありません。とりあえず手当たり次第いろんなレンズを取り付けて試してみたいと思います。みなさんもぜひ色々試してみてください。次回もお楽しみに!

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