Leica M Monochrom Typ246, Leitz Summicron 5cm F2, Photo by Naz

ライカ×モノクロ×オールドレンズ カメラひとつで旅に出る。

第三回 江の島編

またまた間が空いてしまいました。前回から10ヶ月が過ぎたのも、日々の業務に追われていたということでどうかご容赦ください。お待たせしていた間に鬼の分割払いも無事終わりを迎え、M Monochromも晴れて自分のものになりました。東京は秋が深まりつつありますが、ロケに出たのは1ヶ月ほど前の9月下旬、まだまだ夏の陽射しを感じる頃でした。お天気は快晴。ロケとなると光は欲しいですが、好天ですとハイコントラストになり過ぎてモノクロ向きではないかもしれません。とはいえ、悠長にロケ日を選べる余裕もありません。当日は午前中に仕事がありましたので、午後からの出発。往復の移動時間を踏まえると、滞在できるのは数時間。その中で変化のある写真が撮れればいいなと、行き先はフォトヨドバシのロケ地としても登場する江の島としてみました。関東南部にお住まいの方でしたら多くの方が行ったことあるのではないかと思います。私自身も、もう何度行ったか思い出せないほど。とはいえ、江戸時代から続く歴史ある景勝地、何度でも行ってみるといいものなのです。今回カメラにマウントしたのは固定銅鏡の初代ズミクロン。では早速行ってみましょう。

( 写真 / 文 : Naz )

Leica M Monochrom Typ246, Leitz Summicron 5cm F2, Photo by Naz

毎度おなじみ旅の始まりは新宿駅から。小田急線で優雅にロマンスカー、と思っていましたが、時刻表を調べてみると平日の日中に藤沢駅・片瀬江ノ島駅方面への運行はありません(!)。仕方なく急行で藤沢駅まで出て、江ノ電へ乗り換えます。ちなみに、小田急電鉄には「江の島・鎌倉フリーパス」という便利な切符があり、新宿からの往復と江ノ電乗り放題が付いて1,470円。追加料金でロマンスカーにも乗車できますから、江の島や鎌倉を楽しむのにおすすめです。今回もその切符を購入しました。

江ノ島駅を通り過ぎて、1枚目の写真を撮るために七里ヶ浜駅まで行きました。それから再び江ノ電で腰越駅まで戻り、海沿いの国道134号を歩いて江の島へ向かいます。夏の間多くの人で賑わったであろう片瀬海岸も、海の家は片付けられ、だいぶ静かになっていました。片瀬江ノ島駅前からの長い橋を渡ればそこはもう江の島です。

Leica M Monochrom Typ246, Leitz Summicron 5cm F2, Photo by Naz
Leica M Monochrom Typ246, Leitz Summicron 5cm F2, Photo by Naz

ロケですから、歩いてなんぼ。体力と時間に余裕のある方は全行程徒歩をおすすめします。今回はまだお昼ごはんも食べていないということで、エスカレーターで頂上まで上がれる「エスカー」に乗りました。話は逸れますが、エスカーに乗るのは実に四半世紀ぶり。思い返せば高校生の頃、できたばかりの彼女さんを連れて江の島までデートに行きました。その時初めて乗ったエスカー、いくつか乗り継いで頂上まできましたら、降り口の少し先にいるコワモテのお兄さんが笑顔で「さあこっち、こっち」と手招きをしています。お兄さんは壺の中の砂を小さなひしゃくですくうよう言いました。砂の中に混ざっている「ダイヤ」をすくえたら当たりとのこと。順番に恐る恐るすくってみると、まあ見事に2人とも大当たり。「カランカラン」と鳴る鐘、胸が高鳴ります。すくったダイヤは気前よくプレゼント…ですが、ネックレスやネクタイピンへの加工賃は別途有料だそうで(苦笑)。ガラスですらなさそうな怪しいノーブルダイヤ、アルバイトの時給が700円だった在りし日の少年には痛い出費でしたが、25年後こうしてネタになりましたからよしとしましょう。

Leica M Monochrom Typ246, Leitz Summicron 5cm F2, Photo by Naz

エスカーと展望台のセット券を購入したので、途中、日本三大弁財天といわれている江島神社を参拝しつつ、頂上まで辿り着きましたら植物園に併設された展望台へも立ち寄りましょう。灯台も兼ねているだけあって、ここからの眺望は実に素晴らしい。でも海を眺めているのはカップルばかり。外国人の観光客など、私の他にも一人で写真を撮っている人を見かけましたが、ちょっと肩身の狭い感じです。せっかくですから、被写体になってもらいましょう。

Leica M Monochrom Typ246, Leitz Summicron 5cm F2, Photo by Naz

頂上からさらに奥へ進むと、数十段の階段を降りたところに数件の土産物店が並びます。ここは「山二つ」といい、断層に沿って侵食された海食胴が崩落したことで出来たともいわれています。江の島の入り口から階段を上ってきた人たちにとっては丁度いい休憩場所。そこを過ぎたところでお昼ごはんとしましょう。

江の島といえばやはりしらす丼。江の島の周辺は都心から一番近いしらすの水揚げ地です。しらすがいただけるのは禁漁の1~3月以外。また時化の時は漁がないので生しらすはいただけません。ロケ当日は風もほとんどない穏やかな日ということで、生しらす丼をいただくことができました。グラスビールも一緒にいただきましょう。生が苦手な方は、釜揚げしらす丼や二色丼もありました。お店が江の島の高いところにありますから、窓からの展望もなかなかです。

遊覧亭
神奈川県藤沢市江の島2-6-3
http://www.enoshima-katase.jp/遊覧亭/

Leica M Monochrom Typ246, Leitz Summicron 5cm F2, Photo by Naz

山二つから数段の階段を上り、再びフラットなところを過ぎると、今度は下り階段が続きます。崖を一気に下まで降りればそこは「岩屋」と呼ばれている江の島の裏側。海に侵蝕された洞窟のほか、関東大震災で隆起した岩場が広がっています。実は波が高くない日なら、江の島へ渡る橋の途中からこの岩屋まで渡し船も出ています。ここまで船で来て、江の島の入り口の方へ逆まわりに歩いてみるのもよいかもしれません。

Leica M Monochrom Typ246, Leitz Summicron 5cm F2, Photo by Naz

Leica M Monochrom Typ246, Leitz Summicron 5cm F2, Photo by Naz

 

Leica M Monochrom Typ246, Leitz Summicron 5cm F2, Photo by Naz

西向きの岩屋からは、夕陽がよく見えます。ちょうど日没前ということもあって、多くの人が思い思いの時間を過ごしていました。波と風の音に耳を澄ませながら、日没までの間はラストスパートです。

Leica M Monochrom Typ246, Leitz Summicron 5cm F2, Photo by Naz

こんな岩と波の写真もM Monochromの得意とするところですから、しっかりと押さえておきましょう。

Leica M Monochrom Typ246, Leitz Summicron 5cm F2, Photo by Naz
Leica M Monochrom Typ246, Leitz Summicron 5cm F2, Photo by Naz
Leica M Monochrom Typ246, Leitz Summicron 5cm F2, Photo by Naz
Leica M Monochrom Typ246, Leitz Summicron 5cm F2, Photo by Naz

砂浜に岩場、漁港にヨットハーバー。見上げた空には翼を広げたトビがいて、神社には猫がいます。そしてたくさんの人。江の島は実にフォトジェニックな空間。たとえ短い時間でも様々な被写体がカメラを持つ私たちを待っていてくれます。

Leica M Monochrom Typ246, Leitz Summicron 5cm F2, Photo by Naz

 

Leica M Monochrom Typ246, Leitz Summicron 5cm F2, Photo by Naz

 

Leica M Monochrom Typ246, Leitz Summicron 5cm F2, Photo by Naz

旅の終わりに

岩屋で日没を迎える頃には道中に点在していたお店も閉店していますから、真っ暗な中を休みなしに戻ることになります。とはいえ、黙々と歩けば30分もかからずに江島神社の参道まで戻ってこられます。このあたりで少しシャッターを切ってから、片瀬江ノ島駅へと戻ることにしましょう。行きの新宿駅で買っておいた19時13分発のロマンスカーの特急券、わずか620円で得られる贅沢です。ただし、箱根に行くロマンスカーと違い車内販売はありませんから、乗車前のお買い物もお忘れなく。20時20分には新宿駅に到着です。

写真を撮りに出掛けるなら、できることなら多くの時間を確保したいところですが、午後からの半休でもそこそこ楽しめる近場の観光地、活用しない手はありません。例え短い旅でも、しないよりはずっと気分がいいのですから。

1958年製 Leitz Summicron 5cm F2。通称「リジッド・ズミクロン」。6群7枚構成、空気レンズを採用し「解像度レコードを出した」とも云われている伝説のレンズです。生産数は沈胴と固定銅鏡を合わせると10万本を超えたベストセラー。こちらはピントリングのローレットが凸部に施されている前期型で、日本では後期型に人気があるそうです(よって相場が高い)。シルバーの鏡胴はクラシカルなM Monochromの外観にもよく似合います。ズミクロンのフードは「IROOA」が人気ですが、写真のフードはよりラッパ型が深い「ITDOO」。初期型によく合います。

初代ズミクロンの性能は、ご覧の通り現代の標準レンズと比べても遜色ありません。ただし現代レンズのコーティングの進化は著しく、撮ってみるとクラシカルな写りも楽しむことができます。同時代でもF1.5と大口径のズマリットに比べれば開放からしっかりしつつも、少しゆるさと優しさのある写り、扱いやすいオールドレンズではないでしょうか。

沈胴タイプとなりますが、初期型のズミクロンについて、詳しくは「VINTAGE LENS RHAPSODY Vol.05」をご覧ください。

( 2017.11.02 )







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M10が登場しましたが、M Monochromはこちらが現行。M10への進化を踏まえると、動画の撮れる唯一のM Monochromになりそうな1台です。生産台数の少ない機種ですから、お求めはお早めに。

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ライカで最初に買う50mmレンズなら、やはり「ズミクロン」ではないでしょうか。今回のコラムに登場した初代から数えて第四世代目となりますが、レンズ構成は1979年に登場した第三世代と同じ。38年にもなるロングセラー。手にしてみると、アポズミクロンのような突き抜けた性能はありませんが、実にバランスのよい1本だと感じていただけることでしょう。

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