フォトヨドバシ編集部員「Z II」が自腹を切ってライカを購入。こんなにおいしいネタを放っておくわけにはいきません。これからライカをお求めになる方には自分が手にする時を想像しながら、ライカユーザーの方には昔を思い出しつつ生暖かい目で見守っていただきたい。ライカビギナーによるライカデビューリポートをお届けします。

フォトヨドバシ編集部メンバーは、いつもカメラをぶら下げている。「自腹で買わにゃ、そのカメラの本当の良さなんて分かるか!」なんて言われると「すごい心意気だ」と思ってしまうのだが、ニコニコしながら鞄に3台くらい詰め込んでいる姿を見ると「ウソつけ、自分が欲しいだけだ」なんて思わなくもない。入ってきたお金はもれなく機材に変換される不思議なメンバー達。いっそのこと給料は現物支給でもいいのかもしれない。・・・いや、それは困る。

そんなメンバーの多くが愛用しているのがライカである。「いいなぁ」「どこにそんなお金があるんだろう」と思いつつも、なかなかそっち方面の道へは踏み込めないでいた私。昔ながらのデザインもコンパクトなシステムも魅力的だが、何せ偉大なプライスタグをぶら下げている。そんなお金があるのなら「メインで使っている一眼レフのシステムを充実させるほうが先だろ」と自分に言い聞かせつつ・・・でも、いいなぁ、と思う日々。
そんな私にまさかのライカデビューを促したのは、誰かが発したこんな一言だった。

「ライカ買ったら、写真が変わるよ」

・・・意味はよくわからないが、結局のところ誰かに背中を押してもらいたかったということもあるのだろう。「よし、自分への投資だ」なんて理由をつけて、最近出たばかりのライカM-Eを買う事に決めた。決めたと言っても「買わなきゃいけないときが来たら買いますよ?」ぐらいのビミョーな決断だ。わかりますよねこの心境。でも皆は「買わないで悩むぐらいなら買ってから悩め」なんて畳みかけてくる。自分の散財に対するレクイエム??「ぶ、分割でM-E買うぞ!」と私が決意表明するや、拍手喝采。カミさんへの根回しも終わって無いのに・・・後戻りはできなくなった。しかし私自身、頬が緩むのを感じずにはいられない。とんでもないことをしてしまった、なんて思いながらも。

そんなこんなで数日後、厳重に梱包された箱が我が家に届いた。ついにライカユーザの仲間入りである。
まずはレンズ選びであるが、無数にあるレンズの中から勧められたのが「エルマー50mm f3.5」。よくは知らないのだが、ライカレンズの基本であるらしい。普段仕事の撮影で使っているのが一眼レフと大口径のレンズの組み合わせだから「こんなおもちゃのようなレンズで本当に写るのか?」なんて思ってしまったのも正直なところ。だってガラスの量が、明らかに違うではないですか。ちなみにお借りした本レンズはA型から取り出した改造品ということなのだが・・・A型というのが何のことなのかさっぱりわからぬ私である。

ところが、これが実にいいレンズ。二重像合致式の一見いい加減なピント合わせにもかかわらず、合わせたところにちゃんとピントがきていて、ピントピークはピシッとして、そこからの柔らかいボケ感がフワァーっと自然で、また口元がゆるむ。これは想像以上だ。

普段デジタル一眼レフに慣れている身としては、ファインダーの中で「どこまで画面に入ってるか」が掴みにくいというのには戸惑いがある。うまく画面を切り取ったつもりでも、「あ、そこも入っちゃうんだ」というルーズなフレーム。レンジファインダーならではのピントの合わせ方にもまだまだ慣れないが、これらが不便だという感覚はなく、むしろこの道具をうまく使いこなしてやろうという気にさせる。

それは機械に対する礼儀とでもいうか、モノにカミサマが宿るというニッポンジン的感覚とでも言おうか。よい感触のモノや、きちんとした道具というものは、自然と大事に扱うようになるもの。高いカメラなら尚更である。試行錯誤し、ブツブツ言いながら撮るのもまた楽しい。何よりもカチッ、ジ~という静かなシャッター音の後にバックモニターに写し出される写真達のあがりが良くて、また口元がゆるむ。3Dのように浮き出て見える?というのは言い過ぎかもしれないが、このスゴさはこのエルマーレンズゆえなのかカメラなのか両方なのか。どんどん惹き込まれていく感じは、まるで中学生にでも戻ったような気持ちである。

MマウントやLマウントには、どうやらクセ玉といわれるレンズもゴロゴロあるらしい。というのでちょっと試しに「ズマリット50mm、f1.5」なるレンズを使ってみた。なるほど、現代のレンズだったらありえないホワホワ具合。解放にすればするほど、フレアとまでいかない不思議な世界に包まれる。それを生かして普段撮らないクリスマスツリーを撮ってみると意外にもはまって、何枚もシャッターを切ってしまうのであった。

ちょっと背中を押されたこともあって、大枚はたいて踏み込んでしまったレンジファインダーの世界。実際はまだ1回目の支払いも済ませていないのであるが、手にした充足感や「ようし試してやるぞ」という探究心、本気で取り組む気持ちの高まりは、確かに自分の写真を成長させるきっかけになるのかもしれない。ふむ、言われた意味はこういうことだろうか。もう少し撮ってみなければ、本当のところはわかるまい。

(写真・文:Z II)

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