「初心者向けの記事が欲しい!」と、レンジファインダー初心者である編集長と編集員M。しかし、想像するにレンジファインダーカメラの使い手の皆様は、一般的主流のカメラを乗り越えてのユーザなわけで、相当の手練れか好き者!? 私・編集員Kのリアクションは「え〜」てな感じでした。しかし、レンジファインダーカメラ人口倍増計画を目論む我がサイトにおいて(目論むのは勝手でございます)、確かにそんな記事があってもいいかもと筆をとってみる次第です。が、ベタベタに「写真とはこうでなきゃイカン!」なんて偉そうなことを書けないですし書くつもりも毛頭ございません。レンジファインダーのゆる〜いファインダーの如く、小手先ちょちょいで何となく「わかった風」になれる、そんなちょっとイカサマ臭い、しかし「粋」な記事を目指してみたいと思います。

さて、第1回目は「小手先で写真を面白くする方法」という何ともふざけたタイトルですが、今回の趣旨を「上の作例」で解説してみます。
いいですねえ。この、人の話一切聞いちゃいない感が。このカットは、編集長がM型ライカを買って間もない頃に撮影したものです。おじさん一生懸命説明してんのに、レンジファインダーですから、わざわざ右にレンズを振って距離を合わせ(ピントですね)、その後レンズをご覧のとおり振り直してシャッターを切っています。元々独特な視点をお持ちの方ですが、それがストレートに現れていますね。

こんなカットは文句なく「面白い」と思うのです。この「面白い」というのが大変重要です。私なりの解釈となりますが、「面白い」とは、読んでそのまんま「面」が「白い」のです。たとえば人前で何かを繰り出すとしましょう。何でもいいです。そう、「コマネチ!」でもいいです (C)たけし先生
一同「は?」というリアクションが見えますね。つまり「面白い」とは「面」を「白く」しちゃうわけです、バッサーっと。積み上げられてきたものをぶっ壊すのもよいですし、忘れさせるのでもよいでしょう。とにかく、真っ新にしたもの勝ちです。ということはですね、たとえばオーソドックスな構図法や技術の色々も、真っ新にできなければ何の意味も持たないということになります。そこでまず今回は、構図云々なんて小難しい話に入る前に、普通にカメラを使って写真を撮るだけで、面白い画になる基本みたいなのを取り上げてみたいと思います。まさに小手先なのですが、それを知ってる知っていない、意識してるしてないで、まるで違うのです。写真のキャリアが長くなってきたりすると、案外忘れてることだったりもします。今回まずはこのあたりから。じゃ、早速行ってみたいと思います。

(文/編集部K)

手っ取り早く"いい感じ"の写真を収めたいのなら、「望遠レンズを積極的に使ってみる」ことをおすすめします。レンジファインダーカメラは機構上望遠レンズを取り付けても像が拡大されるわけではなく、ファインダーの真ん中に小さくブライトフレームがでてくるだけ。正直撮りづらいです。コンパクトなボディにみょ〜んと長いレンズがつくのも、ルックス的に考え込んでしまいますよね。だから余計に使わない。しかし望遠レンズは小手先ちょちょいの撮影には「かなり効きます」。

種を明かせばカンタン「画面を整理しやすい」のですね。人は一気に色々なものを見せられても、上手く飲み込めません。たとえば箇条書きで文章を書くにしても、片手で数えられる範囲にしておくべきです。結果、頭により入りやすくなります。これと同じことで「画面を整理する」ということは非常に大切なことだと思います。望遠レンズには他の焦点距離のレンズに比べて「ボケが得やすい」と言えます。これが素晴らしい。なぜならレンズをマウントするだけで、画面が整理されるという素晴らしさです。なぜなら、ライカをはじめとするレンジファインダーカメラユーザーの皆様は、シャッターが根を上げるほどにレンズの絞りを殊更に開いてしまい、更にレンズの最短付近からできる限り近い距離で何故か撮影を行う習性をお持ちだからです。つまりこういうことです。90mmのように焦点距離の長いレンズなら、ピントを合わせた被写体の前後が十二分にボケます。

右上の写真は、3人の子供がカメラマンに向かって走ってきてるのか、走らせたのかはわかりませんが、後ろの二人が適度にボケることで、走ってきた様がよくわかります。左の写真は手前の僧侶にピントを持って来ず、後ろの僧侶にピントを持ってきています。手前の方はお若いのですが、後ろの方はかなりお年を召した方で、手前の方を前ボケに持ってくることで、より後ろの方の存在感を引き立てています。50mmあたりでは望めない、望遠レンズ独特の「圧縮効果」も効いています。撮影者本人に聞いたわけではありませんが、恐らくご年配の僧侶の方に注目し、単に低照度下で絞りは開けざるを得なかったのがホントのところでしょうけれど。

望遠レンズのよいところは、「ボケ量の多さ」と「圧縮効果」で画面整理(視線誘導)がし易いことですね。ご自分の写真が「うーん、なんかイマイチだなあ」なんて思っている方、一度騙されたと思って望遠レンズを使ってみてください。そもそも人の目には「ボケ」なんてものは、あまりありません。だから「ボケ」は、いつ見たって、何度見たって新鮮なのです。圧縮効果も然りです。新鮮というのは、要するに面白いのです。使ったモン勝ちですよ。・・・ついでに。このページをいまご覧になってるモニターの外がビッチリ、バッチリ輪郭を伴って見えていますか? なんとなくボヤ〜っと見えてる感じでしょう? これが画面整理というものです。何でもかんでも見えていたら人は疲れます。(1)望遠レンズをまず取り付ける (2)絞りを開けて開放近くで撮りたいものを好きに撮る・・・勝手に画面整理。これで写真力1歩アップです。案外、こんな風には90mmあたりのレンズを捉えてないものです。ぜひお試しください。

望遠レンズと同じ理屈なのですが、超広角レンズも「面白い」のです。肉眼と違った強烈なパースペクティブや、12mmなんてレンズを取り付ければ、もはや視界丸ごと写り込むノリです。これは単純に「面白い」と思うのです。ちなみに、中途半端に広角なレンズではなく、12mm / 15mm / 18mm / 21mm 付近のいわゆる「超広角」と呼ばれるレンズが望ましいと言えるでしょう。上の作例は、TRI-ELMAR-M f4/16-18-21mm ASPH.で、16mmにて撮影したカットです。竹富島で広い海を写し込むのに必然的なチョイスでしたが、超広角でもあまりにだだっ広いところで、水平垂直をキッチリ出して撮影すれば、まるで標準レンズで撮ったような自然な画にもなります(ただし、この広さ感は50mmでは難しいですが)。超広角レンズをマウントして、上のようにお行儀よく撮るのではなく、どちらかというとパースなどを気にせずに、ご自由にぶんぶん振り回すかのように撮ると、これまた面白いのです。

そう、こんな感じです。ベトナムでの1カットですが、蜘蛛の糸のように張り巡らされる電線、妙にPOPな工事の目隠し、やたらと広い範囲が写り込むので必然的に画面のあちこちで輝度差が生まれ、これも面白い。マスクをした女性がまるで何かのミッションをこなしてるかのようです。風景撮影などをこなしてきた人だと、「超広角はビッチリ水平垂直を出さないと妙なパースが・・・」と思いがちなのですが(私もその1人です)、このカットのように被写体が走る方向(この場合電線と左横の幕)へ、レンズの向きをトレースすると、そんなに違和感は生まれません。

JR赤羽駅前での1カット。超広角レンズはとにかく色んなものが一気に写り込みます。画面を整理しようにも、色んな被写体が我こそも!と勝手に入り込んできますから、逆に全部写しちゃえ!てなもんです。これを肉眼で見れば、おそらく真ん中の自由の女神だけにフォーカス、あとは何だったか覚えていないけれど、「ビルに色んなテナントが入ってた」なんて程度の記憶に。超広角の写真とは、つまり目の前の光景を丸ごとスキャンするノリです。この時点で既に面白いわけですから、もう開き直って撮ると思いも寄らない1枚が撮れるかも?・・・コントロールしづらいわけですから、自分自身が面白いという寸法です。

九十九里浜での、今年(2011年)の初日の出です。使用したレンズはNOCTILUX-M f0.95/50mm ASPH.です。解説に使うのにはどうかと感じるド級のレンズですが、NOCTILUXといえば最短付近で絞り開放で、という撮り方をどうしてもやりたいものです。なにせ、他のレンズでは得難いボケ量ですから気持ちはわかります。そこをあえて10m付近の距離で、開放にて使ってみるのです。すると標準域の端正な雰囲気でありながら、F0.95という尋常じゃない明るさから来る大きなボケ量が重なって不思議な画になります。だからなんだ?という話なのですが、つまりこういうことです。道具は目的に応じて生まれてきます。従って、その目的に沿って使うのが、その道具が持つ力を一番上手く使えると言えるでしょう。NOCTILUXなら低照度下でシャッターを切ることでしょう。しかし「何か他の使い道無いかなあ?」と考えるわけです。これが「面白い」のです。他人はともかく、少なくとも自分自身は面白いですよね。脱線しすぎるも結構、でも「少しだけ脱線」するのが具合が良いと思います。ここまでの望遠レンズ・超広角レンズでも同じことが言えますが、超広角レンズで水平垂直をビッチリ出し、それはもう猛烈に当たり前に撮って、いかに説得力のある写真を撮るか、望遠レンズで最短付近・ギチギチに絞り込んで撮る・・とか、とにかくルールはありません。ご自分が面白ければそれでよいのです。

どんなことでも、何だって、たいていのことは「面白いからやる」のだと思います。その過程でツライことや、つまんないこともあってメゲそうになっても、トータルで見ると「面白い」と思うからやるのでしょう。人の真似をするのが面白ければ真似をトコトンやればいいし、ひたすら構図について突き詰めて撮りたければ、それもヨシだと思います。今回は、「日頃使い慣れないレンズに付け替えてみましょう」という非常に安直なお話です。安直なのですが、やはり使い慣れてなければ、思うようにはいかないわけです。しかし写真がお好きなら「ほー」と色々面白いと思うんですよね。私の持論に過ぎませんが、「自分が面白いと思ってやっていないことを、他人の方々が面白いと思ってくれるかな?」と感じるのです。だからといって、自分が面白ければ他人も面白いと必ず思うかといえば、それまた話は別なのですが。しかし「ワシャ写真一本で飯喰って行くぜ!」なんて話じゃない限り、あまり凝り固まらずに撮りたいように、試したいようにやるのが、まずは一番なのではないでしょうか。ちなみに、写真歴も長くなってくると(大して私は長くないのですが)、テクニック自慢みたいな話が一番つまんなくなってきたりします。たとえば、ギター小僧が部屋に集まったりして、テクニックの大披露会みたいな感じですね。そんなことよりも「俺は今こんなのにハマっててさー」みたいな話が一番面白かったりするもんです。途中で自然発生的にセッション始まっちゃったり。テクニック披露会も勿論よいのですけどね。・・・というわけで、あまり人の目を気にせず、楽しみましょう。そう、手遊びなんです。

さて、次回はちょっとしたフレーミングの話をお届けしたいと思っていますが、例によってイカサマ臭いニオイがプンプンしますが、ぜひお楽しみに!

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