東京生活30年、前から気になっていて、なかなか実践できなかったことがあります。それは「都電」「はとバス」に乗ること。生活の足として皆さんに親しまれている都電は、まさに生活の足として利用する機会があればとっくに慣れ親しんでいたでしょうけれど、観光目的となると近くに住んでいるからと、なかなか足を運ぶ機会が訪れず・・・。都電はまだしも「はとバス」となると、そもそも観光を目的とした乗り物ですから、余計に足が向かないものですね。ただ、たとえば都電は地方から出てきた自分にとって、函館、広島、松山の路面電車のような存在。東京の町をゆっくりと眺めながら気に入った場所でふらりと降りる。まだ知らない東京を観光するのに、ぴったりの乗り物なのです。そう、カメラを片手にシーンを探るにはうってつけ。さて今回は、400円で買える一日乗車券を握りしめ、三ノ輪橋から早稲田までの12.2kmの道のりを何処かの番組よろしく途中下車しながら楽しみたいと思います。(写真・文/位田明生)



今回のお伴は「LEICA M9」と、怒濤の超広角レンズ「CarlZeiss Distagon T* 2.8/15ZM」、そして「初代SUMMICRON 2/35」。Distagon 15mmは、レンズ単体で手にするととても大きく感じるのですが、M9に取り付けると見た目のバランスも良くGOODです。また超広角レンズはレンズ鏡胴が短いと、ややもすると自分の指まで写り込んでしまいますが、大柄なレンズのため、その心配がありません。またホールディングも良好で、どこまでも光を綺麗にすくいとってくれる素晴らしい描写をするレンズです。おすすめです。Distagon 15mmの横に並ぶのが、説明不要の「8枚玉」。なんだか出で立ちが奇妙ですが、それはまた後ほど。


毎回ロケが進まないんですよね。のっけからこんなお総菜屋さんに出くわしてはいけません。焼き鳥の包み紙も最高、味も最高でした。


危うく出発地点でそのままカップ酒!なんてことになりそうだったのですが、ともかくスタートです。都電は日中5-6分間隔で走っているそうで、気ままに途中下車して散策ができそうです。・・・しかし、のどかです、のどかすぎます。まあいいや、とりあえず出発!

何だか煉瓦造りのソソられる建物が。気になって「荒川2丁目」で途中下車。この建物は駅の看板によると、東京都有形文化財に指定されている日本初の近代的下水処理施設だそうです。じっくり撮影したかったのですが、周りを塀に囲まれていて中に入ることはできませんでした。こんなときテレビだと、職員の方がにこやかに現れて「どうぞ中にはいってください」と案内されるのでしょうが、事前のロケハン無し、いつもぶっつけ本番、時間無しのこの修行のような東京感光の記事に、そんなことあるわけが無いですね。ただ事前に予約していると見学は可能なようです。せっかく降りたので駅にある案内板を頼りに(ほとんどの駅には見所満載の看板があり、どれも充実した内容です。)、坂道を登ったところにある「荒川自然公園」を訪ねます。

「荒川自然公園」は区立公園の中で最も大きな公園。スポーツ施設も充実していますが、昆虫観察園ではカブトムシ、オオムラサキ観察園では国蝶のオオムラサキを見ることができます。(オオムラサキは、6・11~7・24 土曜日曜祝日に見ることが出来ます)小さなお子さんがいれば、電車に乗るだけでワクワク、途中下車の嵐でさらにワクワク、駅の周りでは大人でも「へぇ〜」なんて、色々と教養に触れることのできるシチュエーションが満載ですよ。

駅名は荒川遊園地とありますが、ここは「区立あらかわ遊園」。区立なんですよね。なんでしょう、浅草の花やしきみたいなノスタルジーさとは違い、本当に素朴な雰囲気で「なるほど区立か〜」と妙に納得してしまいます。もちろん好い意味ですよ。派手なアトラクションなどもよいですが、本来「遊び」や「遊び方」は自分で見つけるもので、このぐらいが丁度よいのかもしれません。

園内には古い遊具、釣り堀、水遊び場などがあり、多くの親子連れで賑わっていました。ただ平日は大きな遊具は動いていないので、「観覧車に乗って上から隅田川を見てみたい」という願いは叶えられませんでした。(平日は入園料無料、土日祝日は有料なのですが、紙に印刷されている一日乗車券を見せると無料になります。お得なチケットですね。)

駅から遊園地の入り口まで徒歩3-4分の距離ですが、短い距離の中に、懐かしい駄菓子屋さん、もんじゃ焼きとかき氷のお店などが点在していて、ついつい時間をかけて歩いてしまいます。さすが昨年で創業60年の歴史ある遊園地のある街並み。レンズの向け先に困らないので、撮影散策にはぴったりです。

白地に赤の文字で書かれた、氷ののぼりに誘われて、テイクアウトの200円のかき氷をいただきました。何種類かのシロップから夏らしいブルーを選び「たっぷりかけてください」と子供のようなお願いにニッコリとご主人。公園の側なので木陰も多く、出発駅の商店街で買った焼き鳥、ビール、かき氷で軽い昼食、ちょうどよい腹心地、ちょうどよい休息。

 

 

どうしてもライカのレンズでクローズアップ撮影がしたくてひと工夫。マイクロフォーサーズのE-Pシリーズに、Mマウントアダプター、ステップアップリング、クローズアップレンズで撮影。summicron35mmなので約70mm相当、食べ物を撮るにはちょうどいいですね。この柔らかい描写、代え難いものがあります。

 

ゆっくりと街中を走る都営荒川線は、走るスピードも、街との距離感も、東京感光にちょうどいい乗り物です。ただ余りにも気になるものが多すぎて、なかなか先に進めないという嬉しい悲鳴も・・・。 まだまだ半分も進んでいない都営荒川線の旅、ここらでちょっと一休み。後編は都電唯一の車庫「荒川車庫前」から終点「早稲田」までお届けします。

 

このページの上部へ