「さあ今日は撮るぞ」と思ってみたら、カメラに詰めるフイルムが見当たらない。まずはフイルムを仕入れなければ、使いたいカメラも使えません。じゃあヨドバシカメラでフイルムを買いながら出かけよう、なんていうわけで今回の東京感光、秋葉原をスタート地点にしてみました。「秋葉原って、なんかあったっけ?」なんて侮ることなかれ。今や海外からの観光客が押し寄せる、日本の一大名所。世界に冠たるヘンテコタウンであります。かつての青果市場は電気街へと変貌を遂げ、いつしかサブカルチャーの発信地に。街を歩けば、きっと面白いものに出会えるはず。買ったばかりのフイルムを詰めたら、線路を抜けて歩き出すことにしましょう。

散歩の行先は気の向くまま。とはいえ、おおよそのイメージくらいはあります。スタートが秋葉原ですから、やはりまずは電気街を散策。神田明神や湯島聖堂に立ち寄りながら、神田川を渡って御茶ノ水の楽器街。大学の多いエリアを抜ければ神保町の古書街です。歩いても無理のないほど近くのエリアですが、それぞれの街はなかなかに個性的。歩くにつれて移り変わる街並みを、たっぷり楽しむとしましょう。

今回持ち出したレンズは、最近お気に入りのツァイス プラナー50mmF2。狭い路地を撮り歩くには広角がよいのですが、ここは潔く一本にしました。レンズに合わせて、ボディはツァイスイコンを選択。さすがにデザインはばっちりです。AEで撮影できるから、あとはフレーミングとピントに集中すればいい。気楽なスナップのお供に、ぴったりの組み合わせではないでしょうか。

電気街といえば家電やコンピュータをさがすのに便利な場所ですが、小さなお店を覗いてみればトランジスタやコンデンサ等の電子部品がバラ売りだったり、そのままでは動かないジャンク品が積み上げられていたり、Windows95用のソフトウェアが売られていたり。はてはガラスケースのなかに個人が商品を並べていたり、ほかでは見かけないほど多種多様な商品が並ぶ街です。目的のモノに応じた店がどこかにあるはずなのですが、効率的に回れるようになるにはきっと何度も通わなければならない。それがまた面白い街なのだと思います。

少し路地を入っていくと、閑静なエリアが出てきます。年期の入ったビルや一軒家、公園で過ごす人々。休日の喧騒が嘘のようです。

御茶ノ水方面に歩いて行くと、いつしか神田明神の鳥居が現れます。参拝の前に、ついつい立ち寄ってしまうのは「天野屋」さん。江戸の世から続く老舗ですから、ご存知の方も多いでしょう。甘酒好きの自分にとっては、いつでも甘酒をいただけるありがたいお店。店内の雰囲気もすばらしく、甘味もあり、散歩の休憩にはぴったりなのです。

冷やし甘酒を一杯。夏場など暑い日には、一層の美味しさです。

すこし雲行きがあやしいと思っていると、やがて雨が降りだしました。雨が降ったらスナップは終わり? そんなことはありません。もちろんオートフォーカスではないレンジファインダーカメラだから、傘をさしながらの撮影はちょっと厄介。それでも、晴れの日の写真が晴れの日にしか撮れないように、雨の日の写真は雨の日にしか撮れないのです。雨が降ったら、濡れた景色を撮影するチャンス。撮りづらいシチュエーションにめげず、雨の光景に目を向けてみましょう。

江戸時代には学問の総本山であった湯島聖堂。
その屋根の下で、年代の違うふた組のカップルが雨宿り。こんな光景も、この瞬間に雨が降ってくれたおかげです。

オフィスビルに紛れて、うっかりすると見落としがちなニコライ堂。多くの人に馴染みが薄いと思われるギリシア正教の教会ですが、日本最大のビザンティン様式の建築物としても有名です。教会は信者のための祈りの場所、と思って外観を眺めさせてもらうにとどめましたが、実は信者でなくとも祈祷への参加や聖堂の拝観ができるようです。


御茶ノ水の楽器街・学生街を抜けていくと、神保町の古書街はすぐそこです。大通りを一本入れば静かな路地が続く、昔ながらの街並み。古書街もまた、小さな書店がそれぞれがそれぞれに得意なジャンルを持っていて、他では見つからない本がどこかに隠れている、極めてディープな世界。古い写真集が並ぶ店もあるのでしょうか。今度しっかりと下調べをして、書店巡りをしてみたいところです。

撮り歩きの楽しみは、寄り道の面白さでもあります。よさそうな喫茶店を見つけたら、迷わず休憩してみましょう。神保町はすばらしい喫茶店がひしめくエリアですが、今日は「トロワバグ」さんで一息。神保町交差点からすぐ近くに、少し地下に潜っていく、いい雰囲気のお店があります。店構えを見るだけでも「このお店なら間違いない」というオーラを感じませんか? 以前に友人に連れてきてもらってお気に入りになったこのお店、ひさしぶりに訪ねてみました。実はコーヒーが目的だったんですね。今回の散歩。



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コーヒーはまろやかな酸味の「トロワブレンド」と、コクのある苦味の「ハイブレンド」。もちろん「ブルーマウンテン」「モカ」「マンデリン」といった豆をストレートに楽しむこともできますが、お店の味を味わうにはブレンドが一番でしょう。酸味よりも苦味が好みの自分は「ハイブレンド」を、季節限定のレモンケーキとあわせて注文。一杯一杯丁寧にドリップされたコーヒー、期待通りのおいしさでした。

おしゃべりをする人、読書をする人、たばこを喫う人。よい喫茶店では、それぞれが思い思いの時間を過ごしているものです。それができるのは、そこに落ち着いた空間があって、おいしいコーヒーがあるから。地元に根づいたお店でほんのひとときでも時間を過ごしてみれば、町の空気をすこしだけ深く味わうことができます。撮り歩きの際には、ぜひそんなお店を探してみてください。

美味しいコーヒーとよい雰囲気でまったりしてしまったので、今日はこれでおしまい。36枚撮りフイルム2本分、半日程のスナップでした。といっても半分くらいは、休憩していたかもしれません。

お散歩スナップの楽しさは、なんの制限もないこと。好きなところをスタート地点にして、気の向くまま撮り歩き、疲れたら休憩しましょう。終わってみたらほとんど写真を撮っていなかった、なんていう一日でも、いいじゃありませんか。

コシナ ツァイスイコン シルバー
軽快で機能的なボディに、よく見えるファインダー。ライカとはひと味違ったテンポで撮影できる、頼もしいレンジファインダーカメラです。絞り優先オートで撮影できるから、はじめての方でも安心。
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コダック エクター100 135-36枚撮
超微粒子のカラーネガフイルム。とはいえISO100という感度を選ぶのは、「なるべく絞りを開きたいから」だったりもします。ラチチュードも広く、おおらかに撮れるカラーネガの魅力。フイルムならではの楽しみです。
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EPSON カラーイメージスキャナー GT-X970
フイルムスキャンに対応したフラットヘッドスキャナー。フイルムで撮った写真もパソコンに取り込んで、デジタル処理ができます。
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カールツァイス プラナー 50mm/F2.0 ZM シルバー
今回全編を撮影したレンズ。画角・明るさ・大きさ・重さなどのバランスが良く、まさに標準レンズと呼ぶに相応しい逸品です。写りのすばらしさは、作例を見ていただければお分かりになるでしょう。一家に一本、プラナーを。
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コダック ポートラ800 135-36枚撮
高感度カラーネガなら、光量の少ない場面や開放の暗いレンズでも安心。暗くなってこそ活躍できるのはもちろんですが、日中ではしっかり絞って被写界深度を稼ぎ、パンフォーカスでのスナップに便利です。
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